「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 2014」の授賞式が3月2日(日)に開催され、31歳の竹葉リサ監督がわずか6日間で撮影したという『さまよう小指』が「グランプリ」と「シネガー・アワード」の2冠に輝いた。「ファンタスティック・オフシアター・コンペティション」部門は11作品で争われたが、まず『さまよう小指』はメディア関係者選出による「シネガー・アワード」を受賞。続いて「北海道知事賞」にウエダアツシ監督の『リュウグウノツカイ』、「審査員特別賞」に光武蔵人監督の『女体銃 ガン・ウーマン』が選出された。そして、最後に残された「グランプリ」を審査員長の根岸吉太郎監督が発表したが、再び『さまよう小指』がアナウンスされると、竹葉監督は一瞬、驚いた表情を見せつつ、満面の笑みを浮かべ、根岸監督から賞状を受け取った。竹葉監督は現在31歳で、元々5年ほど前からゆうばり映画祭に他作品の宣伝の手伝いなどで足を運んでおり、ここで映画製作のスタッフと出会ったことで、自ら映画作りを志すようになったという変わり種。ここ数年、本映画祭に短編作品を出品してきたが長編監督は本作が初めて。壇上の挨拶では「絶対に獲れないと思ってたので嬉しいです! 震える~!!」と絶叫。「これまで副会長とか銀メダルのキャラだったので、私の人生で(ソチ五輪の)羽生結弦並みの金メダルがもらえるなんて!」と語り、トロフィーを掲げて飛び跳ねていた。映画は、ストーカー女性が思いを寄せる男性の小指から彼のクローンを作り上げるという物語。低予算でわずか6日間で撮影されており、小澤亮太、我妻三輪子、末永遥、津田寛治らが出演している。周囲からは「このシナリオでこの予算?」と驚かれたそうだが、「津田さんが撮影に向かうバスで『監督、僕らは百戦錬磨なので安心してください』と言ってくださった。実際、基本的にみなさん1テイクOKで、本当に6日間で撮影できました」と改めてキャスト・スタッフ陣への感謝を口にした。根岸監督は講評で「昨日、審査会で2時間半をかけて1本ずつについて語りました。映画を観る楽しさを再確認する作業でしたし、全会一致で選びました」と明かした。特に『さまよう小指』の受賞理由と魅力について「何と言ってもユニークでシナリオのアイディアが豊富。竹葉ワールドの次が見たいと思った」と説明した。同じく審査員の斎藤工は「若い世代の女性監督と出会い、エネルギーを感じました」と竹葉監督を始め、女性監督の台頭に言及。また「今日、メイクルームにタッパーがあったので、どうしたのかと聞いたら、メイクさんがここに来る途中のお店でカレーのテイクアウトをお願いしたら、その自宅のタッパーに入れて対応してくださったそうです。飲み屋さんでもその店のマスターやおかみさんが夜中に自家用車で全員を宿泊している宿まで送迎してくださる」と夕張市全体の温かいホスピタリティにも触れた。さらに「世界中、いろんな映画祭はあるけど、ゆうばりは点ではなく、線でできている映画祭。コンペの作品の半分くらいが親殺しや3Pを扱ってて、それもゆうばりらしい(笑)。もっと好きになりました!」と思いを熱く語った。『女体銃 ガン・ウーマン』の光武監督は、「審査員特別賞」受賞に「これは主演の亜紗美への女優賞だと思っています!」と語り、亜紗美さんを壇上へ呼び、受賞の喜びを分かち合い、会場は温かい拍手に包まれた。また今年から創設された「インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション」部門は、本作が初監督作となる堀貴秀監督の『JUNK HEAD 1』が受賞。堀監督は副賞の賞金を手に「続編を作るしかないなと思ってます!」と意欲を覗かせていた。映画祭は天候にもに恵まれ、今年から札幌と夕張市を結ぶバスが運行したことなどもあり、クロージング作品の上映を残した16時半の時点で12,230人を動員。昨年を大幅に上回る見込みとなった。<ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 受賞一覧>■オフシアターコンペティション部門グランプリ:『さまよう小指』(竹葉リサ監督)審査員特別賞:『女体銃 ガン・ウーマン』(光武蔵人監督)北海道知事賞:『リュウグウノツカイ』(ウチダアツシ監督)シネガー・アワード:『さまよう小指』(竹葉リサ監督)スカパー!映画チャンネル賞:『死ななくて』(ファン・チョルミン監督)■インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門グランプリ:『JUNK HEAD 1』(堀貴秀監督)優秀芸術賞 ・『イナーシャル・ラブ-隋性の愛-』 (セザール・エステバン・アレンダ&ジョゼ・エステバン・アレンダ監督) ・『サイクロイド』(黒木智輝監督) ・『肛門的重苦 Ketsujiru Juke』(冠木佐和子監督)審査員特別賞:『貧血』(加藤麻矢監督)