アカデミー賞で作品賞、監督賞など4部門に輝いた名作を渡辺謙主演で日本でリメイクした『許されざる者』の完成報告会見が8月1日(木)に行なわれたが、オリジナル版の監督・主演のクリント・イーストウッドから届いた映画を称賛する手紙が紹介された。オリジナル版はイーストウッドに加え、ジーン・ハックマン、モーガン・フリーマンら名優が集結した西部劇。かつてはアウトローとして知られたが、いまは妻を亡くして子どもたちと暮らすガンマンが、かつての仲間の誘いを受けて賞金首を討ち取るべく再び銃を手にするという物語。日本版では時代設定を明治維新直後、舞台を蝦夷の地に置き換えて、かつて人斬りと怖れられた男を主人公に、時代から取り残された男の戦いを葛藤と共に描き出す。イーストウッドは手紙の中で、今回のリメイクの申し出について「かつて黒澤明監督の『用心棒』に感動して(西部を舞台に置き換えたリメイクの)『荒野の用心棒』に出演したのを思い出した」、「深い縁や絆を感じます」と語る。完成した日本版『許されざる者』はすでに鑑賞したそうで「激しくも美しい魂が詰まっている」と絶賛。自身の監督作『硫黄島からの手紙』に主演した“盟友”である渡辺さんについても「素晴らしい演技を見せている」と語り「(映画の)成功を祈っています」とエールを送った。渡辺さんは「クリントは気持ちよくリメイクを許してくれた。懐の深さ、信頼して託してくれたんだというのを感じた」と振り返り、イーストウッドから届いた称賛の言葉に「クリントの心に届いたんだなと、頑張った甲斐があった」と安堵をにじませ、しみじみと喜びを口にした。若い頃にオリジナル版を見て感銘を受けたという李相日監督はイーストウッドを「映画界における神様のような存在」と語り、その“神様”が自分の映画を見てくれたということすら「まだ実感がわかない。地に足がついていない感じがする」と落ち着かない様子だった。すでに本作はヴェネチア国際映画祭での上映も決まっており、そこで世界の目にさらされることになる。イーストウッドの“お墨付き”をもらい、今後の世界的な評価にも期待がかかるが、李監督は「(オリジナルは)世界中の映画人が観ている映画。人の生き様、人間の業のようなものをにじみ出せないか? とずっと追いかけてきた。物語は一緒ですが、そうした部分での“違い”も明確になっている作品だと思うので、(世界の評価が)楽しみでもあり怖くもあります」と心情を明かした。『許されざる者』は9月13日(金)より公開。