仕事柄、 好きな映画は? と良く聞かれます。実際のところ 好きな映画は沢山あってとても選べない、でも、まず答えるなら『花様年華』。私が映画に初めて恋したのはウォン・カーウァイ監督の『花様年華』でした。行ったこともない国、生きたこともない時代の話なのに懐かしいと思った。ここに還りたいと思った。あのスクリーンに入りたい、って思った。画面全体に漂う色気。朱と、少し襟の高いチャイナドレスにドキドキ。艶やかというのはこういうことか、と。そんなウォン・カーウァイ監督の待ちに待った新作。もはや、嬉しいを飛び越えて“有り難い”の境地。二時間、夢中でした。きっとこの作品に関して私は、出来映え云々なんて恐れ多くて語れないです。存在してくれるだけで良いんです。お話は、ジャッキー・チェンの師匠と呼ばれるイップマンの伝記。勿論アクションシーンに力が入っているけれどスクリーンの吸引力がグンと高まるのは、男と女が描かれる時。微妙で絶妙な距離感。視線と反対方向の余白。詩の世界ですね。ウォン・カーウァイさん、あなたのリングはこっちですよー。アジア映画の可能性をありったけ詰め込んだ映像美。カラーデジタルで人の肌が綺麗、と思ったのは初めてかもしれない。照明、なのでしょうか。雨の水滴。吹雪に揺れるファー。徹底して美しいものだけをスクリーンに映す心意気。何度でも、何度でもスクリーンで観たい。観れるうちに。音楽も、『花様年華』と同じ梅林茂さん。サントラで言えば、『花様年華』とおなじくらい『2046』もオススメです。