壮大なスケール! 本気の台湾映画! とかそんな感想になるだろうなと思って劇場に入ったのに観終わったらとても悲しくなってしまった。人は繰り返すんだね、争いを。私たちの使命は歴史を生き直すこと。でもただ生き直すだけじゃ能がない。過去から学んで少しでも 平和の価値を、意味を知って進歩していると思わなければやりきれない。私はきっと愛を知っている。たぶん、そんなにずっと愛に囲まれていた訳ではないけれど何度か体験したあれは、愛だ。でも私は平和を知っているのかな。私が平和だと思っていた日常はまやかしかもしれないよ。私にくれた愛はまやかしなんかじゃないと言い切れるけど私が当たり前に享受していた平和は、と聞かれると否定できない近頃。愛は二人で作れるけど平和は二人じゃつくれない。お話は1930年代、台湾の原住民と統治支配する日本軍のお話。日本にアンフェアな描かれ方はしてない。ただ、押しつけられて殺し合って殺される。それだけ。それだけ。それだけ、っていうのも変な話じゃないか。私は、映画の中のあの人たちは、誰に怒ればいいんだろう?もっと、アバターみたいな娯楽映画かと思ってたから。油断してたら心の、きっと誰もが持ってた柔らかい部分をぐわしと掴まれてしまった。エンドロールに流れた原住民の唄の歌詞。耳に切り刻まれてしまった。拭ってももう指が届かなくくらい深くに、浸水。「お前達の喜びの涙は魂の中で既に枯れている私の真の子供たちよ 知っているか無念を噛み殺さなければ夢は語れない私の真の子供たちよ 一体何をしているのだ どうしてこんなことに」。憎み合うことに、慣れませんように。『セデック・バレ』(2011年・台湾)----------------------------------------------監督・脚本:ウェイ・ダーション製作:ジョン・ウー、テレンス・チャン、ホァン・ジーミンプロダクションデザイン:種田陽平美術プロデューサー:赤塚佳仁アクション監督:ヤン・ギルヨン、シム・ジェウォン出演: リン・チンタイ(林慶台)/安藤政信, ビビアン・スー, ダーチンほか*2013年4月20日(土)より全国劇場公開中。