こういう作品には「有り難う」って言わなくちゃ。中野監督がその人生の中で何を体験して 何を受け止めて乗り越えて来たのか、が透けてこちらに見えてしまいそうでハラハラするくらい大切な人の死と、母親と、向かい合ってる。だから、女性が強く逞しく描かれてて…良かった。「良かった」と言うのは“良い悪い”の良かったじゃなくて、安心しました。ほっとしました。とかそういう類いの「良かった」です。私が子供という立場に甘えて見て見ぬふりしてしたかった、母の女の強さと脆さを見つけました。去年『ラジオデイズ』という作品でご一緒させて頂いた渡辺真起子さんがお母さん役。ロビーにはサインポスターとアジア太平洋映画祭・最優秀助演女優賞のトロフィーが飾られていました。(おめでとう! おめでとう!)勿論そんな冠が無くたって尊敬出来る人。格好いいんだよな真起子さん。尾野真千子さん主演の短編『琥珀色のキラキラ』との2本立て。正直、一本目の『琥珀色の~』から泣けて泣けて仕方なかった。あまり、泣けますよ推しはしたくないのだけれど。きっと緩急のテンポが素晴らしいんです。緊張してるところに笑いが来て、心がふわっとした頃にズシンって重いものを突きつけられる。だからすごく、胸が痛い。でも笑っちゃう。よく分からなくなってぐちゃぐちゃになる。朝10字半の上映を観終わって閑散としたロビーに出たらあ。一人じゃなくて大切な人と観れば良かった、と久しぶりに後悔。離れて住む母親に電話したもの。そういう、私を素直にさせてくれる映画。恋人がいなかった人はいても、父親と母親がいなかった人っていないんだよね。普遍のテーマですね、家族。『チチを撮りに』監督・脚本 中野量太出演:渡辺真起子/ 柳英里紗、松原菜野花