今年最初の連休を終え、最終日の成人の日は東京で初雪となりました。しかもタイヘンな大雪に。成人式を迎えたのはいつだったか…と振り返るのも気が遠くなるくらいの年月が経ったけれど、大人になって良かったことのひとつに、おいしい食事を堪能できるということだろうか。その筆頭にもなる鮨。ひとり鮨ができたら立派な大人なはずなんだけど、実現できておらず…。というわけで、言わずと知れた江戸前鮨の名店「すきやばし二郎」。「ミシュランガイド」6年連続三つ星に輝く味、その真摯な姿勢、鮨職人、小野二郎の人生を追うドキュメンタリー映画『二郎は鮨の夢を見る』をどうぞ!本人の淡々とした語りから始まる。昨年3月ニューヨークで全米公開をスタートし、またたく間に大ヒットを記録し、世界30か国以上で公開された。ついに我が国でも凱旋公開。監督は本作が初の長編映画となる、メトロポリタン・オペラの総帥ピーター・ゲルプを父に持つデヴィット・ゲルプ。約3か月に亘って、二郎の仕事場・東京と、生まれ故郷の静岡での密着取材に成功した。二郎は世界で最も高齢の三つ星料理人としてギネス認定登録され、87歳の現在でも朝から晩まで毎日鮨を握り、弟子の後進にあたる。彼の2人の息子たちは二郎のスピリットを引き継ぎ、店を任された今も邁進する日々だ。名店の裏にありそうな厳しい師弟関係も、緊張感はあるもののとても穏やか。料理人に絶対不可欠な清潔感が常に漂っている。また、留まることを知らない向上心は、おいしく味わってもらうために、「おまかせ」という、その時にいちばんのおいしい鮨20カンのメニューを考案した。握る、出す、食べる、味わう、そして余韻。料理評論家の山本益博氏は、それはまるでコンチェルトのようだと言う。クラシック音楽の流麗な旋律に似た心地良さ。ダラダラと飲ませる鮨屋ではなく、握りのみで勝負する。二郎の無駄のない、シンプルなトークや姿勢、生き様は握る鮨にも表れるのでろう。余計なことはしない、する必要がないのである。シンプルを極めればよりピュアになる。鮨を食べさせる店、それ以外に何もない。鑑賞中はもちろん鮨が食べたくなるし、ニヤリと静かに笑う二郎の握る鮨に称美し、いつの間にか二郎のファンにすらなっているのである。これはもう鮨好きの人にはたまらなく、鑑賞後は勢いで「すきやばし二郎」に飛び込みたくなるけれど、えっと、3万から…。こりゃ自前ではムリです。何方か私を連れてってください!
ヴィム・ヴェンダース、ソフィア・コッポラら世界の映画作家が魅せられた“東京”を特集上映「映画に愛される街、TOKYO!」 2024.2.22 Thu 18:00 ヴィム・ヴェンダース、ホウ・シャオシェン、アッバス・キアロ…