マーティン・スコセッシがザ・ローリング・ストーンズのライヴをカメラに収めたドキュメンタリー。もはや両者に説明はいらず、このライヴ・ドキュメンタリーがどれほど観る者をワクワクさせるかも理解していただけると思う。舞台となるのは、ニューヨークにあるコンサートホール、ビーコン・シアター。2,800人程度を収容する会場で、スタジアム級でのパフォーマンスがお約束のストーンズにとっては小さな空間であり、詰めかけた観客にとっては、彼らを近くで体感できる至福の場所だと言える。もちろん、至福を体感できるのは、フィルムを通してライヴを目にする者も同様。走るミック、はにかむキース、さらにはもちろん彼ら4人のエネルギッシュなパフォーマンスが、パーソナルな雰囲気さえ漂う1つのドラマとして迫ってくる。また、時折挿入される過去映像も、タイミングといい、チョイスといい抜群。「昔の映像を使う際に気をつけたのは、音楽を引き立てる程度にすること」と語っているスコセッシだが、その引き立て方にもフィルムメーカーとしてのセンスがにじみ出ている。そんなスコセッシとミックが繰り広げて笑いを誘う、“ライヴとライヴ映画を巡るささやかな攻防の軌跡”もぜひお楽しみあれ。