感受性豊かな10歳の少女・ベティは、1歳上の姉が寄宿学校に行ってしまった寂しさを抱えながら、両親の不仲に心を痛める日々。新学期が始まった学校生活も、楽しいことばかりではない。そんなある日、彼女は父親が院長を務める精神病院から抜け出してきた青年・イヴォンと出会い、彼を庭の自転車小屋にかくまうことにするが…。青春映画の佳作『デルフィーヌの場合』のジャン=ピエール・アメリスが監督を務め、『アメリ』のギョーム・ローランが脚本を手がけているだけに、設定に変化球を見せておきながら、女の子の心理をまっすぐに見つめた成長物語の仕上がり。繊細で無垢なヒロイン、ベティの純真は大人の世界では二の次にされ、少年少女の世界でさえ子供特有の危うい無邪気の前に深い傷を負わされたりもするが、そんな彼女がイヴォンとの恋にも似た関係を経て、ガールズパワーという名のたくましさを身につけていく展開が愛らしく、頼もしい。意志の強い眉に大きな瞳、不安と好奇心を混在させた口元が印象深い小さな主演女優、アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージが、幼いヒロインの心の揺れを見事に表現。真っ赤なコートに身を包み、全てに向かって全力疾走するベティの姿は、子供時代を経た誰しもの心を捉えるはずだ。