アニメの世界に暮らしていたプリンセスが、意地悪な女王の策略で実写世界のニューヨークへ追いやられてしまう…。この奇想天外なオープニングにワクワクさせられ、一気に物語に引き込まれてしまう。歌や踊りが満載で、テイストは純然たるディズニーアニメに負けず劣らず夢いっぱい。ディズニーの名作たちを愛で茶化したパロディもふんだんに盛り込まれているが、ストーリー自体は至って真摯だ。おとぎ話のお約束よろしく、出会って間もない王子様と恋に落ち、彼との結婚に突進しようとしていたプリンセス、ジゼルは、複雑な現実世界に放り出され、「人を愛するということ」について考え始める。子持ちでバツイチの弁護士・ロバートや彼の幼い娘との触れ合いを通して。おとぎの国と現実社会の恋愛事情を交錯させながら、他者との関係を築くとはどういうことか? 人を真に愛するとはどういうことか? について優しく触れているのが本作のポイントだ。昨年のアカデミー賞で助演女優賞候補に挙がった演技派女優エイミー・アダムスが、ハッピーオーラをまき散らす純粋なヒロインを軽やかに好演。そんな彼女に現実の複雑さを教える一方、彼女の影響で純粋なものを信じたくなる中年男性・ロバートを「グレイズ・アナトミー」のパトリック・デンプシーが甘いマスクで演じている。また、おとぎの国の申し子のような正真正銘の王子様を、『ヘアスプレー』のジェームズ・マースデンが再び美声を披露しながらパワフルに熱演。彼ら以外は考えられないほどハマったキャストが、素晴らしい作品世界を作り上げている。