『マルホランド・ドライブ』以来となるデヴィッド・リンチ監督の新作は、まさに奇々怪々。そもそもはテーマもストーリーも決めずに撮った映像が、やがて1本の映画へと導かれたのだそうだ。ストーリーはこうだ。既婚のハリウッド女優・ニッキーは、不倫に走る男女の姿を描いた映画に出演することに。ただし、その作品は撮影中に主演の男女が殺害され、企画が頓挫してしまったといういわくつき映画のリメイクだった。そんな中、ニッキーは映画のストーリーをなぞらえるかのように、共演男優のデヴォンと不倫関係に陥り、現実と映画の世界を混同させていく。と言われれば、そんなストーリーのような気もするが、違うストーリー解説を掲げられれば、それはそれで信じてしまいそう。ローラ・ダーン演じるニッキーはハリウッドにいたかと思えば、次の瞬間はポーランドにいたりもするし、違う世界にいると思しき女性とコンタクトを取ったりもする。さらには、妖しい雰囲気のウサギ人間たちも普通に登場。かと思えば、ハリウッド通りのホームレスたちは瀕死のニッキー(が演じる映画の主人公・スーザン)の横でとめどなくおしゃべり。このウサギたち、何者??? このホームレスたち、何事???しかしながら、エンディングまでの3時間、決して飽きることはない。リンチの「?」は常に心地よいものだからだ。ゆらゆらと3時間揺られ、自分なりの解釈にたどり着いた後、ふと思う。次の「?」に会えるのはいつかな? と。