公開に向けてお届けしている『夜のピクニック』キャスト&スタッフインタビュー。第二弾は長澤雅彦監督に話を伺った。長澤監督は、『Love Letter』『PicNic』など岩井俊二作品でプロデューサーを務め、『ココニイルコト』(01)で長編監督デビュー。このデビュー作品でいきなりヨコハマ映画祭新人監督賞、毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、第21回藤本賞新人賞を受賞し、その後も『ソウル』(01)、『13階段』(03)、『青空のゆくえ』(05)など続々と監督作品が続いている。篠原哲雄監督『はつ恋』(00)ではオリジナル脚本を担当するなど、プロデューサー、監督、脚本家と多彩な才能を発揮している映画人だ。Q. 映画化のきっかけは?プロデューサーの牛山が出版された本を読んで、小説のファンだったんです。「とにかく面白い本があるから、読んでみて」と渡されて。彼とは『青空のゆくえ』で一緒にやっていたので、その人から本を預かるということは、つまり映画化してみないか、ということですよね。本を読んで、確かに面白いのですが、スクリーンの隅から隅まで、1,000人を活き活きと動かして撮るという点と、内容がただ歩くだけ、という点で、映画化はすごく難しいだろうなと思いました。でもその苦労があるからこそ、やってみたいな、と思ったんです。Q. 本屋大賞を受賞するなど、既に多くのファンがいる作品。映画化にあたってのプレッシャーは?ベストセラーというものは、その主人公や場面のイメージが読者の数だけあるもの。そこはある程度仕方がないと思っています。自分がこの本を読んだときに感じた感動を、映画を観てくれた人が、映画を観終わった後に感じてくれれば嬉しいなと思います。原作ありきのものを映画化するということは、自分で気づかなかった新たな能力や知識を引き出してくれることでもあるんです。オリジナルのものは、はじめから自分でできる範囲の中で考えてしまいますから。そこが大きな違いですね。Q. キャスティングがとても成功していますよね。まず西脇融役の石田卓也くんについて聞かせてください。今回のキャスティングは本当にばっちりでした。石田くんは素直で真面目で一生懸命。演技に関しては「自由に考えて」と完全に任せたので、最初は面食らってましたが、それでもいいものをだしてきました。彼は今後とても良い役者になると思います。色んな役柄にトライしてみてほしい。Q. では主役の多部未華子ちゃんは?悔しいくらいにうまい。憎たらしい(笑)。そうですね、役者としてはもうすこし欲があってもいいかなとは思いますが、彼女は感じてるいるままに演技して、それが正しいんですよ。天性の女優ですね。次に何をやってくれるか、期待しています。Q. 5,000人のエキストラ。どうやってまとめたのでしょう?まず集めるところから大変でした。現地の方々がものすごく協力してくれて。熱中症対策でお医者さんボランティアで参加してくれました。人が集まったら次は演技。最初に言ったように、1,000人がスクリーンの隅々でちゃんと演技をしてもらわないとこの映画は成り立ちません。演技指導は、役者の卵がやるような感じで、まずバレーボールのラリーを20回続けることで、同じ学校の生徒という自然な演技ができるよう仲間意識を生んだり、色んなシーンを想像して演技をしてもらったり。恥を恥としない、楽しんでやっていいんだ、と思ってもらうようにしました。映画に参加するのではなく、自分が映画の一部なんだと思ってもらうことが大切なんですよね。Q. ここは観てほしい!というシーンは?どのシーンも観てほしいし、こちらからお客さんに提示するものではないかな、と思ってます。ただ言うのであれば、音楽。ロックからクシックまで、バラバラな音楽世界が広がっていますから。注目、注耳です(笑)。Q. これから観る方へメッセージを。言ってしまえば、ただ歩くだけのお話。でもそれがなんでこんなにも“特別”になるのか、それをぜひ映画館で確かめてください。