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ステレオタイプな「ヒロイン」像から抜け出し、生身の人間を細やかに描く「(not)HEROINE movies」シリーズの魅力

“(not)HEROINE movies(ノットヒロインムービーズ)”シリーズの3作品のテレビドラマ化が決定。5月12日からは「よだかの片想い」(全4話)、6月9日から「そばかす」(全4話)が毎週日曜日の深夜、各話30分で放送となる。

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『わたし達はおとな』©2022「わたし達はおとな」製作委員会/『よだかの片想い』©島本理生/集英社 ©2021映画「よだかの片想い」製作委員会/『そばかす』©2022「そばかす」製作委員会
『わたし達はおとな』©2022「わたし達はおとな」製作委員会/『よだかの片想い』©島本理生/集英社 ©2021映画「よだかの片想い」製作委員会/『そばかす』©2022「そばかす」製作委員会
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  • 『わたし達はおとな』© 2022『わたし達はおとな』製作委員会
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  • 『わたし達はおとな』© 2022『わたし達はおとな』製作委員会
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次世代を担う監督と主演女優の組み合わせで描くプロジェクト“(not)HEROINE movies(ノットヒロインムービーズ)”シリーズの3作品『わたし達はおとな』『よだかの片想い』『そばかす』のテレビドラマ化が決定。メ~テレにて4月から順次放送されている。5月12日からは「よだかの片想い」(全4話)6月9日から「そばかす」(全4話)が毎週日曜日の深夜、各話30分で放送となる。

本稿では改めて、“(not)HEROINE movies(ノットヒロインムービーズ)”シリーズの魅力をひも解いていく。


「(not)HEROINE movies」公式サイト

(not)HEROINE moviesとは?

本プロジェクトは、『勝手にふるえてろ』『寝ても覚めても』『愛がなんだ』『本気のしるし』を手掛けたメ~テレと制作会社ダブがタッグを組み、等身大の女性のリアルをつむぐ映画シリーズ。

“へたくそだけど私らしく生きる”をコンセプトに、次世代を担う映画監督×俳優のタッグでオリジナリティあふれる3作品を生み出してきた。ステレオタイプな「ヒロイン」像から抜け出し、我々観客と同じ目線・地平で日々を生きる生身の人物を細やかに描くレーベルとして、映画ファンを中心に支持されている。


生々しい会話劇と役者陣の演技合戦は必見
『わたし達はおとな』


『わたし達はおとな』© 2022『わたし達はおとな』製作委員会

「(not)HEROINE movies」第1弾を飾ったのは、いま最も注目を集める劇作家といっても過言ではない若き奇才・加藤拓也の長編映画監督デビュー作『わたし達はおとな』。大人ぶっているが中身はまるでそうではない大学生の痴情のもつれを圧倒的なリアリティと痛々しさ満点で描く。

大学でデザインを専攻する優実(木竜麻生)の妊娠が発覚。演劇サークルに所属する恋人の直哉(藤原季節)に打ち明けるも、まだまだ未熟なふたりは現実に戸惑い、衝突してしまう――。

主演を務めるのは、瀨々敬久監督『菊とギロチン』で映画初主演を果たし、近年では『Winny』『福田村事件』やドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」といった話題作への出演が立て続く木竜麻生。優実の揺れ動く心模様を繊細に体現し、観る者の内面にクリティカルに響く名演を魅せている。対する直哉を演じるのは加藤監督の信頼も厚く、『佐々木、イン、マイマイン』や『空白』ほか噛み応えある作品にこの人あり、な活躍を見せる藤原季節。クールぶっているが実益が伴わない若者を真実味たっぷりに演じ切っている。

加藤作品の特徴である、とにかく生々しい会話劇と「妊娠発覚の戸惑いや狼狽え」という心情描写がミックスされた本作。『マリッジ・ストーリー』や『落下の解剖学』、或いは『フレンチアルプスで起きたこと』等々、夫婦の衝突をリアリティ重視で描いた傑作は数多いが、まだそこに至らないふわふわした関係である恋人同士をここまで解像度高く描いた手腕に、驚嘆させられる。トイレのドアを隔てて優実と直哉が口論するシーン等々、思い当たるフシのあるシーンと感情が乱高下する木竜×藤原の演技合戦は必見だ。

しかしその中でも、主人公の境遇を冷笑的に見つめ続けるのではなく、彼女の心情に寄り添いながら「ままならない現実でも生きてゆく」覚悟を静かに応援する優しさもきっちりと内包している。

『わたし達はおとな』Blu-ray
<価格>税込5,280円(送料別途)

https://metelecinema.stores.jp/

映画版『わたし達はおとな』各プラットフォームにてデジタル配信中。



完璧ではないが愛しい人物たちを描写
『よだかの片想い』


『よだかの片想い』© 島本理生/集英社 © 2021映画「よだかの片想い」製作委員会

「(not)HEROINE movies」第2弾は、若手とベテランが融合した一作となった。原作は、『ナラタージュ』や『ファーストラヴ』等、映画化も数多い人気作家・島本理生が2012年に発表した恋愛小説。主演の松井玲奈が原作にほれ込み、長年映像化を熱望していたという。

劇中では、そのエピソードもかくやと思わせる入り込みを披露。「顔の左側にアザがあることで他者との交流に消極的になった女性」の心情を掘り下げつつ、当事者以外にも“痛み”が沁みてくる豊かな芝居で魅せる。自分を理解してくれて、否定しない映画監督・飛坂(中島歩)と出会い、ようやっと恋に踏み出せたかと思いきや、猜疑心が働いてしまい信じきれないという臆病な切なさには、心を震わされるだろう。

監督を手掛けた安川有果は、デビュー作『Dressing Up』で第14回TAMA NEW WAVEグランプリ、第25回日本映画プロフェッショナル大賞 新人監督賞を受賞。本作が2作目となるが、東京国際映画祭のアジアの未来部門に選出されるなど、業界最注目の逸材。『よだかの片想い』においても、光が印象的な映像世界や、心の機微を掬い取るような落ち着いた演出の数々で奥行きをもたらしている。

脚本を手掛けたのは、『アルプススタンドのはしの方』『愛なのに』『夜、鳥たちが啼く』等々、数多くの作品を世に放ちづける城定秀夫。熟練の人間描写が冴えわたり、完璧ではないが愛しい人物たちを創出した。松井はもちろん、濱口竜介監督作『偶然と想像』や藤井道人監督作『パレード』等々クリエイターから引っ張りだこの中島歩、『生きてるだけで、愛。』『コンフィデンスマンJP』シリーズの織田梨沙、『うみべの女の子』「カムカムエブリバディ」の青木柚とキャスティングの妙を感じる演者たちのアンサンブルも絶妙だ。

<放送情報>

『よだかの片想い』(各話30分・全4話)

放送局:メ~テレ(愛知・岐阜・三重)

5月12日(日)より、毎週日曜日 深夜0:30~放送


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「恋愛感情」をテーマに展開する
温かい人間模様
『そばかす』


『そばかす』© 2022「そばかす」製作委員会

「(not)HEROINE movies」第3弾は、アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』で世界に知られた若き演技派・三浦透子の単独初主演作。「恋愛感情」をテーマに不器用ながら温かい人間模様が展開してゆく。

監督は、劇団「玉田企画」の主宰者として活躍し、『僕の好きな女の子』で注目される玉田真也。映画『his』の脚本家アサダアツシと組み、どこか跳ねるようなユーモアを織り交ぜつつ、登場人物も観る者の心も両方救い上げるような真摯ながらホッとする作品に仕上げた。

恋愛したい気持ちが湧かないのに、周りに理解してもらえない佳純(三浦透子)。挫折気味の人生を送る彼女が、家族との衝突や友人との交流、新たな出会いを通して自分自身の生き方を肯定していく本作。三浦の持ち前の演技力がいかんなく発揮され、自分と周囲のズレに対する違和感や哀しみ、ちょっとした怒りが過度でなく日常の些細なものとして構築されていく温度加減が秀逸だ。

それぞれ事情は違えど、大なり小なり恋や愛に振り回されている佳純の周囲の人物に扮するのは、前田敦子伊藤万理華北村匠海といった華やかなキャスト。田島令子、坂井真紀、三宅弘城も含めた共演者たちが見せる芝居への“反応”で三浦=佳純が変化していく――そのグラデーションにも注目いただきたい。

三浦といえば、『天気の子』用に書き下ろされた「グランドエスケープ」の歌唱を務めるなどミュージシャンとしても活躍中。本作では、アニメ「呪術廻戦」のエンディングテーマに起用されるなど、独特の詞世界とサウンドで急速にファンを拡大している「羊文学」の塩塚モエカとコラボレーションし、主題歌「風になれ」を歌い上げている。こうしたカルチャー好きに刺さる化学反応も、「(not)HEROINE movies」の魅力の一つといえるだろう。

<放送情報>

『そばかす』(各話30分・全4話)

放送局:メ~テレ(愛知・岐阜・三重)

6月9日(日)より、毎週日曜日 深夜0:30~放送



『そばかす』Blu-ray
<価格>税込5,280円(送料別途)

https://metelecinema.stores.jp/

映画版『そばかす』は各プラットフォームにてデジタル配信中。


「(not)HEROINE movies」公式サイト

〈提供:メ~テレ〉

《SYO》

物書き SYO

1987年福井県生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て、2020年に独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、小説・漫画・音楽・ゲームなどエンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。並行して個人の創作活動も行う。

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