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©2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC ENTERTAINMENT
傑作と言われる映画は、いつも私たちに夢と希望を与え、時に厳しい現実をつきつけ、心に焼き付くような感動を教えてくれる。『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』で2度のアカデミー賞®「監督賞」に輝いた巨匠クリント・イーストウッドが、音楽界に不滅の伝説を残した4人組のPOPグループ「ザ・フォー・シーズンズ」の名曲誕生に秘められた真実を描いた感動のヒューマン・ドラマ『ジャージー・ボーイズ』。
“スター”を目指し、時代を駆け抜けた若者たちが紡ぎ出すドラマにスポットを当てながら、「映画」「音楽」「仕事」のそれぞれ3つの視点から、イーストウッドの新たな名作が残してくれたメッセージ、その見どころをご紹介!
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新谷里映映画ライター
映画を中心にライター&インタビュアーとして活動中。女性誌「MORE」「ESSE」、ウェブ「cinemacafe」「ORICON STYLE」「NYLON JAPAN」、映画誌「日本映画magazine」「CINEMA SQUARE」などでインタビュー、コラムなどを執筆。ほか、日テレ「PON!」(月曜)、J-WAVE「I A.M.」の「MY FIT MOVIES」に出演。
ホンモノの感動とドキドキが詰まった映画
過去に『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』のそれぞれで米アカデミー賞の「作品賞」「監督賞」を獲得したということもあり、クリント・イーストウッドの監督作品というだけで「観たい!」と思う人は多いだろう。たとえその映画の主人公たちが映画界においてはほとんど知られない人たちであっても、イーストウッドが選んだ人材は“逸材”と認識される気がする。
彼の33作目となる新作『ジャージー・ボーイズ』は、「ビートルズ」よりも前に音楽界を席巻したポップスグループ「フォー・シーズンズ」の物語だ。曲を聞けば誰もが「知ってる!」とリズムに乗れるような、そんなヒットソングを数多く残してはいるけれど、たとえばこの映画の中心になっている「シェリー」「君の瞳に恋してる」がどのようにして生まれたのか、当時の彼らの人生は知らない。お金もコネも名誉も何もなかった4人の若者が、音楽という才能だけで光を浴びていく姿、そして名曲に秘められたいくつもの秘話、それらを名匠であり、音楽、特にジャズの愛好家であるイーストウッドが紡いでいく。面白くないわけがない。
しかも、この映画が栄光と挫折といったありきたりの枠に収まらずに“特別”であるのは、適材が配役されていること。「フォー・シーズンズ」を演じる4人の俳優にとってこれが映画デビュー作ではあるけれど、もともとはトニー賞受賞の傑作ブロードウェイ・ミュージカル。その舞台でフランキー・ヴァリを演じたジョン・ロイド・ヤングがこの映画でも同役を演じている。彼を中心に舞台版から数多くの人材を起用したことで、“ホンモノ”の感動がスクリーンに映し出されるというわけだ。
フランキー然り、「フォー・シーズンズ」のメンバーの見た目は、現在のいわゆるイケメンには当てはまらない…かもしれないけれど、彼らの音楽、彼らの才能を通していつの間にか彼らに恋をしている──映画を観始めたときと観終わったときの“恋”のドキドキ指数がこんなにも変わってしまうなんて! と、自分自身の気持ちの変化に驚くはず。恋愛に直結しなくとも、その人に、その人の才能に、純粋に惹かれていくドキドキする気持ちは女性を綺麗にさせる。『ジャージー・ボーイズ』はそんなドキドキが詰まった映画でもある。
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真友ジーン./MayuGene(マユジーン)
シンガーソングライター
兵庫県生まれ、横浜育ちの都内某大学に通う3年生。13才から作詞作曲を始め、現在都内のライブハウスにて、バンド、アコースティック、さまざまなスタイルでライブ活動中。20才にしてすでにドップリ音楽人生の中におり、ポップアイコンとしての新たな境地の開拓を図る一方、より独自の世界観に勢いをつけてきている。RONG-Tai FACTORY所属。
「音楽で成功するために必要なことは、辛抱することだ」
物語の最初に、後の「ザ・フォーシーズンズ」のギターであり、ボーカルのフランキーの才能を見い出したトニーが放ったこの言葉…一見切ないようで、でもすごくリアルで、それを苦と捉える、捉えないもその人次第で、胸に刺さりました。
映画を観終わっての第一声は、「この映画のサントラ欲しい!」。孤独、嘆き、叫び、そういった人間っぽいじゅくじゅくと膿んだ感情を、この時代の音楽って、絶対的にキャッチーな「美メロ」にのせて、ハーモラスに、ダンサブルに、POPに、カラッと歌い上げてしまうところに「芯の強さ」を感じました。
スターダムにのし上がったミュージシャンというのは、決して生まれ持った「才能」だけではなく、ヒットソングについて、自分自身のことについて、「知る努力(研究)」があってこそなのだなぁと、今一度思い知らされました。メインボーカル以外の楽器隊も歌唱力が求められるなんて…私もタイムスリップできたら、当時の楽器隊の人たちの中のボーカリストの一員として招かれたい!
今と違って『新曲が出来た!』って時も、デモを録ってとかじゃなく、聴かせたい人の前で、“せーのっ!”で、生で聴かせる感じとかも羨ましいっ! メロディーが良ければ、そこに声が、リズム隊が、ギターのフレーズが、乗っかって来て、自然と曲になっちゃう感覚的なチューニング、楽しそうでたまらない。レコーディングも、バンドもボーカルもライヴな感じで、そういう空気感がすごく羨ましいなと思いますね。凝りすぎてなく、シンプルで、だけども相当な実力(と精神力)がないと出来ないの! より良いものを、みんなで創ろうとする、妥協しない感じが、見ていて本当にワクワクしちゃいます。
どれだけ辛いことがあっても、ステージに上がれば、お客さんを、喜ばせ、笑顔にさせる、エンターテイメントに変換出来ちゃう強さ、私が自分のこれまで、この先の音楽人生の中で、大事に思っていることでもあったので、ものすごく感情移入しちゃって、うんうん頷きながら大号泣しちゃいました。
いかに音楽家たちが、音楽のことを、お客さんのことを、必死に、真剣に、考えているかということ、是非この映画を観て、みんなに知って欲しいです。この映画自体も、リアルなのに、ライトに描かれているところが、観やすく、後味も良くて、とっても好き! 私もこれから、エンディングのフランキーの言葉を借りれば、「電池の切れない人形」のように、音楽を求めて進んで行くのだと、そう心に誓いました。
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壷井央子キャリアデザイナー
一人一人の個性を生かした『キャリア=仕事を通じた生き方』を創るキャリアデザイナー。これまで250社以上の企業の採用支援と、3500名以上の就職希望者のキャリア支援の実績を持つ。2012年には女性のキャリア支援スクールを立上げ、「ハイヒールで戦場に行く」という言葉をモットーに、どんな場でも女性らしさを失わず、キャリアを築く事を提唱している。
誰もに与えられる「Gift」は、自分を成長させる可能性
1950~1980年代を全盛期とする「ザ・フォー・シーズンズ」が、オンタイムではない私たちアラサーからアラフォー世代にとってこの映画は、少し違った見方が出来る。
私たちの世代は、この映画を「不遇な生まれ環境から這い上がった栄光と挫折のヒーロー物語」という見方ではなく、懐かしの名曲や懐かしの時代を回想する映画としてでもなく、この映画の中に自分と同じ普通の「個」を探しながら見る世代ではないかと思っている。
この映画を観終わった時に、ひとつの言葉が頭に浮かんだ。「Gift」という言葉。一人ひとりに与えられた才能は神様からの贈り物で、その贈り物をいち早く見つけ、発揮し、自分の人生の味方につけること。それは、彼らが特別なのではなく、私たち誰もが出来ること、誰にでも与えられたもの。
この映画は、「4人のヒーロー物語」。現実的な言い方に変えると、この物語は、「4人の『仕事』を通じた成長ストーリー」。たまたま華やかな仕事に就いた彼らだが、私たちにだって同じことがいえる。
誰もがもつ「仕事」において、私たちはどんな個性を発揮しているだろうか、過去に囚われて自分の才能を見つける努力を怠っていないだろうか、チャンスに対してタイミングを逃すことなく掴もうとしているだろうか。
彼らは、仕事を通じて、自分の過去と自分の可能性と自分の未来、そしてそれぞれに立ちはだかる壁と向かい合ってきた。それはまさに、メンバーそれぞれの「生き方」であり、ひとりひとりの個性なのだ。彼らが特別なのではなく、私たち誰もが出来ること、誰にも与えられたもの。私にとっての神様からの「Gift」とは何か、そんな風に自分と照らし合わせて見たくなる映画である。
『ジャージー・ボーイズ』
米ニュージャージー州の貧しい地区に生まれ、成功から一番遠い場所にいた4人の若者が、自分たちの音楽だけでつかみ取った夢のような栄光の軌跡。そして、そのまばゆいばかりの栄光ゆえに、次々に彼らを襲う、嫉妬、裏切り、借金、グループの崩壊、そして最愛の家族の喪失。しかし、彼らの人生はそれで終わりではなかった…。ザ・ビートルズ以前に世界を席巻した“ザ・フォー・シーズンズ”の誰もが知るヒットナンバーと共に、感動の真実が描かれる。原作は観客動員数2000万人を記録した世界的大ヒットミュージカル。
監督/製作:クリント・イーストウッド
キャスト:ジョン・ロイド・ヤング、エリック・バーゲン、マイケル・ロメンダ、ビンセント・ピアッツァ、
クリストファー・ウォーケン
配給:ワーナー・ブラザース
映画オフィシャルサイト:http://www.Jerseyboys.jp
9月27日(土)新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー他、全国ロードショー
©2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC ENTERTAINMENT