2月22日に飛び込んできたニュースは、それほど彼女を知らない人さえも、なぜかやるせない気持ちにさせたことでしょう。折しも日本が空前の韓国ブーム真っ只中の時期だっただけに、前途洋々だった美しき韓国女優イ・ウンジュが自ら命を絶ったという悲劇を、より身近に受け止めた人も多かったはず。
『クローサー』は危険です。4人のキャラクターはそれぞれ別の恋愛の形を信じ、嘘をつき、相手を責め、同情し、そして必死に愛を求める。そこで4人のうち誰に共感するかを語ってしまうと、自分の恋愛観を見透かされるようで怖い…。人は結局相手を傷つけたくないから嘘をつくのではなく、自分が傷つきたくないだけ。エゴであり、弱さでもあります。本作はこのリアルな弱さやズルさを全て見せているからこそ、例え不倫でも、それもひとつの恋愛としてどこか納得してしまうのかも。でも、あーその気持ち分かるっ!と口にした瞬間、ズルイ自分を露呈してしまっているのだから、やはりこの映画は軽々しくは語れません…
“女の人は強いなぁ…”。映画『クローサー』を見終わった感想。この映画、女性が観ると、“してやったり”って感じでスッキリするんだろうけど、男からすれば、決して後味がいい話ではない。恋愛映画は大抵女性が泣いてるパターンが多いけど、この映画は男の弱い部分がいっぱい描かれてるのでおもしろいなぁと思う。
この映画は、観ていて痛い。痛すぎます。どうしてそんなに痛いかというと、恋愛によって表出してくるエゴとか汚さとか弱さとか、つまりは人間の正体というものを、身もふたもなく、包み隠さず描いているので、観ているこちらも正論や綺麗ごとといった自衛手段をすべてむしり取られてしまうから。そのうえ、あなたの、そしてパートナーの恋愛観をも暴きます。誰に感情移入するか、彼らの混乱をどう肯定し、どう否定するかで、秘密の過去までバレるおそれがあるのでご注意を。ですから、デートで映画を観た場合は鑑賞後に余計なことは喋らないと決め込むか、強い絆を確信していない恋人とは観ないようにとご忠告しておきましょう。あえて自分たちの真の姿に挑みたいという方は、ぜひぜひカップルでどうぞ。でも、鑑賞後のトラブルについて、責任は負いかねますので悪しからず。
風薫る5月。夏の一歩手前の爽やかな季節がやってきました。新生活をスタートして、ちょっと慣れてきたこの時期は、自分らしいリズムを見つけ、毎日の生活の中に何か発見があったりするもの。例えば、気にもしていなかった人物が、ちょっとしたことをきっかけに突然気になりはじめたりとか。
映画界で有名なおしどりカップルといえば、スティーブン・スピルバーグ夫妻やトム・ハンクス夫妻、マドンナ&ガイ・リッチー、スーザン・サランドン&ティム・ロビンス、ジョニー・デップ&ヴァネッサ・パラディなどなど。現代フランス映画界を代表するカップルなら、シャルロット・ゲンズブールとイヴァン・アタルあたりでしょうか。
ウェス・アンダーソン、という監督の名前にピンとこなくても「『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』の…」といえばイメージが浮かぶのでは? 今回は前作で主な舞台となっていた“家”から“海”へと飛び出します。ビル・マーレイ、ケイト・ブランシェットといったビッグ・ネームから常連のオーウェン・ウィルソンまで多彩なキャストや映画制作のメイキング・シーンも印象的。DEVOのマーク・マザーズボーが手がける気の抜けた炭酸のようなテクノ・ポップもたまりません。しかし一番の見どころはなんといってもビル・マーレイでしょう。アンテナつきのヘルメットをかぶるビル・マーレイ、若者に交じって走り出すビル・マーレイ、息子(?)に嫉妬するビル・マーレイ…とにかくビル・マーレイが炸裂です。最後のほうで彼のもらすひと言がたまらなく泣けました。『ロスト・イン・トランスレーション』とはひと味ちがったビル・マーレイの魅力をお楽しみいただけると思います。
初日で観た『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』以来のアンダーソン作品。やっぱり期待は裏切られなかった。ビル・マーレイのあの哀愁漂う背中。デヴィッド・ボウイの名曲をポルトガル語にアレンジした音楽。活字にできないオリジナルな、(勝手に)名付けて言えば“アンダーソニック”なビジュアルとストーリー展開。そして最後に残る仄かな感動。あなたの近くにも、ちょっと変わってるんだけど(というかヘンなんだけど)、なぜか目が離せなくって、憎めなくって…あれ、むしろ好き!?という人がいませんか? 私にとってはそんな映画です。この映画が好きな人同士なら、ファッションでも音楽でも何でも、きっといろんな面での趣味が合う、というような。
落ち目の海洋探検家ズィスーとその仲間たちの海の生活は、ヘンテコ生物を追いかけ、ライバルの海洋研究所に忍び込み、海賊に狙われ……と愉快でしっちゃかめっちゃか。短パン姿のウィリアム・デフォーのトッチャン坊やぶり、腹ボテのケイト・ブランシェットのヘンなしゃべり方、クレヨンタツノオトシゴ、ペイズリータコ、ジャガーザメなどヘンテコな空想生物たちなど、すべてがマンガチックで楽しい。
春になると陽気が良いせいなのか、心の中で「このまま薄着になるのはまずい。夏までになんとかしないと」と思ってしまうせいなのか、なんだか体を動かしたくなるものです。徹底的にインドア派で、冬の間は縮こまっていた私ですら、そう思うのだから、アクティヴな方々ならなおのことでしょう。
『ギャングスター・ナンバー1』でポール・ベタニーのシャープな魅力にやられてしまった私にとって待望のベタニー最新作です! 舞台出身で個性的な役をこなしてきた彼にとって、恋愛や引退に悩む落ち目のテニスプレーヤーという今回のキャラクターはあまりにも普通でちょっと物足りないかなあという気もしましたが、かえって等身大の親しみやすさでファンの心を虜にしそう。“世界で一番スーツの似合う男”とも言われるベタニーのカジュアルなスタイルが見られるのもたまりません。メインテーマでもある「競技と恋愛の両立」は、スポーツ選手たちのプライベートをのぞいているようで勉強になります。また、試合のシーンは観ているだけで脂肪が燃焼する気がします。椅子に座っているだけでひと汗流したあとの爽やかさを味わえるなんてこんなにお得な映画はありません。これで本当に脂肪が燃焼していればなおよいのですが…。
タイトルからもわかる通り、本作はテニス4大大会のひとつ、ウィンブルドンを中心に描かれています。ウィンブルドン・センターコートでの初めての撮影や、数多くのプロ選手たちの登場によってつくりだされた本場の雰囲気はテニスファンとしては見逃せません! また、実際にウィンブルドンを征したジョン・マッケンローとクリス・エバートが解説者として本人役で出演していることにも注目です。短気で有名だった現役時代を彷彿とさせるマッケンローの辛口コメントは笑いを誘います。リアリティでは本物のプレイに及びませんが、1ポイント1ポイントの緊張感は十分に伝わってきます。でも決して汗臭いスポーツムービーではなく、恋の悩みや可愛いテニスファッションは女の子ならきっと気になるはず! テニスに興味がない人も観て損はさせませんよ。
偶然の出逢い、ドラマチックな展開、ロマンチックなハッピーエンド——「映画のような恋」の要素が揃った、忘れられないラブストーリーがまたひとつ誕生しました。本作を送り出した製作スタジオ「ワーキング・タイトル社」の名前を聞いて、その出来映えに納得。『ノッティングヒルの恋人』や『ラブ・アクチュアリー』をはじめ、ラブコメを作らせたらハズレなし!と言われて久しい同社ですが、今回もまた期待を裏切りません。主演はエネルギッシュでキュートなキルスティン・ダンストと演技派ポール・ベタニー。奇跡を現実にしてくれる素敵なストーリーには「映画っていいなぁ」と素直に嬉しくなります。アカデミー賞受賞作は見逃せないし、キアヌの新作も気になるし…と話題作のひしめく春ですが、ハッピーを求めるなら『ウィンブルドン』に真っ先に走りましょう。劇場を出る時は笑顔でいること間違いなしです!