全米はもちろん、世界各国での公開時には様々な議論を呼んだ注目コメディ。いわゆるブラック・ジョーク的な面白さを期待していると、ちょっと想像を超えるかもしれません。ひたすら超過激シーンの連発によって笑いを作りだしている本作には、『サウスパーク』ファンでさえも笑えない可能性有り…。R-18指定には、それなりのわけがあるというものです。 それでも劇中の歌を始め、何役もの声を担当しているトレイ・パーカー監督とマット・ストーンには脱帽! 顔から指先まで、驚くほど細かい動きをする人形たちにも思わず感心してしまいます。
『チーム★アメリカ』略して“チム★アメ”。なにかに似ていると思いませんか? そう、「アメとムチ」です。ブラック・ジョークという名の甘い罠(アメ)にだまされてはいけません。そんな生ぬるい期待をムチで滅多打ちにする暴動・暴言の限りはジョークどころか超がつくほど本気です。さらにそのムチは〈チーム・アメリカ〉のメンバーたちにも容赦なく向けられます。メンバーに課せられる数々の苦難といったら…! 自分たち自身ですら笑い飛ばす潔さこそが、監督であるトレイ&マットの本領でしょう。パロディにかける彼らの恐るべき執念にはただならぬものを感じます。ちなみにこの映画をひと言で言うと「悪いのはゴリラよ!」です。どういう意味かは本編を観てのお楽しみに…。
アメリカ公開時期にえらく政治的要素が強調されていたチム★アメ。まあ観てみてください。外交って何? アメリカって何様さ? そんなことは皮肉って、忘れて、バカになって笑ってみれば? そう、兎にも角にもおバカな映画なんです。市民も構わず銃を撃ちまくったり、ハリウッドスターが国際警備組織にいきなりスカウトされたり、世界中の貴重な建造物もどかどかと破壊したり… つまりありえないことだらけ。でもこんなおバカな作品を、そのポップなセンスでコツコツと創り上げてしまったマット&トレイに乾杯!! 日本人にはつくれないだろうなぁ、チム★ジャパ。
結婚って本当に難しい、赤の他人が人生をともにするのは大変なことなんだな〜と実感しました。ストーリーは1組のカップルが離婚調停をするシーンから、2人の出会いまでをさかのぼるという不思議な展開で進みます。結婚式・出産などの人生の節目で、あってはならない小さな歪みが起こっていくのですが、なんともショックな事件ばかり。私にとっては「こりゃ離婚するわな…」と思っちゃうような出来事なのでした。あと注目すべき点は、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ演じる妻が着用している水着の可愛さ。2人が出会ったシチリアの海で着ていたワンピースとビキニが超キュートなんです! シンプルな色にちょっと変わったデザイン、これを観てから、ずっとあの水着を探しています!
現在から過去へ遡っていくラブストーリー…というと先に公開された『エターナル・サンシャイン』を思い出しますが、前者の時間の流れが"円"であるとしたら、本作は一方通行の"線"です。つまり、破局は出会いにつながらず、一度巻き戻した時間は二度と再生されないのです。ヒロインのヴァレリア=ブルーニ・テデスキは日本ではあまり馴染みがありませんが、元スーパーモデルで現在はシンガーとしても活躍するカーラ・ブルーニの姉でもあります。主演の2人が別れる前のダンス・シーンはたまらなく悲しい予感に満ちていますが、初めて出会った日、夕陽に向かって海の中を歩んでいく2つの背中には確かに幸せな未来が見えるのです。「たとえ今が幸せでなくても、かつて幸せだったことが消えたわけではない」。そう考えるとこれは悲劇ではなく、喜劇なのかもしれません。
この際、正直に言ってしまいましょう。私は『フォレスト・ガンプ 一期一会』が苦手です。ついでに言うと『I am Sam アイ・アム・サム』も。自閉症、知的障害などを扱った作品は、それだけで「心温まる物語」と認識されてしまうもの。だから、私のように、「苦手」なんて告白すると、まるで非人のように思われてしちまいがち。ほとんどの場合、そのテーマの扱い方に違和感を覚えることが多いのです。
数々ある夏休み映画の中で、ほとんど気に留めていなかった作品『コーチ・カーター』。ところが、これが観てびっくり。涙が幾度となくぽろぽろと。あまり期待していなかっただけに(ごめんなさい!)、観終わった後の喜びもまたひとしおなのでした。
極めてシンプル! ここまでムダのない作品があっていいのでしょうか!? 登場するものはペンギン、氷、雪。あとは捕食の関係にあるアシカや肉食の鳥。それでここまでの世界観を広げられるのはなぜ?と自問自答してみたところ、それは、映像と同じくしてペンギンたちの生き方がシンプルだから。種を存続するために生きている。それだけのために危険を伴った長い長い行進をする。はっきりいって今の自分が忘れかけていることなのです。情報や物が溢れる時代の中でどうしたらいいかわからず混乱したり、何をやりたかったのか忘れてしまう… そんな人たち(私)は自分を顧みるいいきっかけになりました。はい、私は泣いてしまいました! 子ペンギンの可愛さにも泣けますよ!
この映画の成功の元はなんといってもドキュメンタリーを無理やりドラマにしてしまったことです。巷に数多あふれるネイチャー・ドキュメンタリーですが、そろそろマンネリ化してきた様相も否めません。純愛ブームや韓流ブームなどにもみられるように、世間は今ドラマを求めているのです。物語はあるひと組のペンギンカップルをメインに語られていきますが、あまりにたくさんのペンギンが出てくるので、最初に出てきたカップルが後に出てくるカップルと同じ組み合わせだと言われても真偽の見分けようがありません。でも、これをヤラセといって批判することはできません。なぜならこれはドラマなのです。だから嘘をついてもよいのです! あと、意外に笑えるのが要所要所で入るペンギンたちのコメント。エミリー・シモンによるキュートな歌も要チェックです。英語の歌詞をよく聴くと全く違った映画に見えるかも…!?
親が子を、子が親を、子が友達を……、我が日本では信じがたい事件が次々に報道される昨今だからでしょうか、親子愛、隣人愛に溢れた皇帝ペンギンたちの姿を描くこのドキュメンタリーに、より一層胸を打たれました。月並みな表現で恐縮ですが、こんなにピュアに感動したのは久しぶりです。営巣地へ向けて行進する群れの姿、やがて訪れる求愛のダンス、そして産卵、大切な卵を何ヶ月も食を断ち温める雄たちがブリザードからスクラムを組むようにお互いを助け合す一連の行為は、私には苦行・修行のようにもうつりました。そこに知恵や工夫による改善が入る込む余地はほとんどないのでしょう。しかし「自らを偉大なる存在と自認する人類よ、彼等の行為を“愚かなり”と奢った目で見ることなかれ」です。昨今の事件の話に限らず、我々人類が積み重ねる愚行の数々を省みて、皇帝ペンギンから私は学びたい。この夏、ぜひ親子でご覧いただきたい1本です。
巷では、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』だとか、『宇宙戦争』だなどと騒いでいます。そういった大作はもちろん、さすがに面白い。ですが、シネマカフェでは、シネマカフェらしい夏映画をお奨めしたいと思います。
今月は、1週分多くコラムをお届けしています。そこで、いつもとは違った切り口の番外編を1本。6月は「母の愛」をテーマにお送りしてきましたが、近々公開される超話題作にもありました、母と子の物語。
主人公のアルフィーを演じているのは、今ハリウッドで最も美しい男と称されるジュード・ロウ。本作はアルフィー自身が、彼をとりまく数々の情事について観客に語りかけながら進むので、まるで1対1で彼と話しているかのような気持ちになります。あのブルー・グリーンの目に見つめられれば、いつまでも懲りない浮気性も、女を完全に見下した傲慢さも、すべて許してしまいたくなる気持ちをちょっと理解できるかも…? もちろん本作での共演がきっかけで交際が始まった婚約者、シエナ・ミラーとどこで恋に落ちたかをミーハー心で想像するのも楽しいですよ。ちなみに結婚はまだ先のようですが、現在ふたりで再共演作を探しているとのこと。こちらも楽しみ!