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『キンキーブーツ』レビュー
イギリス映画といえば、スパイ、ギャング、そしてブルーカラーを描いた映画が定番のジャンルだけれど、本作は靴職人という労働者階級の人々を描いた作品。『フル・モンティ』『ブラス!』などと同様に、困難に直面した貧しい人々が、胸に芽生えたささやかな希望を武器に再生していくという、単純だけれど魅力的な物語。これは実話なのですが。
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映画にまつわるファッション小噺 vol.6 スーツな男 ケビン・スペイシー
男性のファッションでは、結構スーツが好きな私。ズボンのすそがやけに短かったり、ちらりと見える靴下がスポーティーな白だったりする公務員風や、おしゃれ心が見えすぎちゃっているキメキメスタイルなどではなく、身体に程よくフィットしたスーツを、ナチュラルに着こなしている人を素敵だなと思うのです。でも、そんな人を見つけるのは実はけっこう難しい。まず、着る人自身が素敵でなければいけないから。それは上辺だけのことではなく(もちろん、容姿がよければなおよろしいが)、パリッとしたスーツが似合う紳士でなければ、ということ。紳士と言っても、昔ながらの意味する、「上流社会の男子」ということではもちろんありません。いわゆる、品性があって、礼儀正しい大人という意味で。これって、すれ違っただけではなかなか判別できない。電車の中で、誰かに席を譲ったりしていてくれれば、わかり易いのだけれど。
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水も滴るいい女たち vol.3 狩人を支える筋金入りのロハスな女
「水も滴るいい女たち」、第3弾は、夫を支える良妻像をナチュラルに見せてくれた『狩人と犬、最後の旅』のメイ・ルー。物語は、カナディアン・ロッキーで、本物の狩人として暮らすノーマン・ウィンターの、自然と調和した生活を描いたもの。といっても、完全なるドキュメンタリーではなく、彼の人生からインスパイアされた、犬ぞり犬、自然、獲物たちとの共存を切り取っていくのです。森の木が伐採され、多くの動物が消えていく中で、生活のために動物を獲って肉を皮を得る。ノーマンは、動物を殺すことについてこう話します。「許しは請わない。感謝するだけだよ」。必要な分だけ獲りながら、自然界のバランスをとっている自分たちは自然の一部であり、森の番人だと胸を張る。そんな男との生活は、当然ながら過酷きわまりないものです。
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『スーパーマン リターンズ』ケビン・スペイシー来日インタビュー
『ユージュアル・サスペクツ』で助演男優賞。『アメリカン・ビューティー』で主演男優賞。わずか5年の間に、2度のオスカーを受賞しているケビン・スペイシー。性格俳優として、映画界はもとより、演劇界でも名を馳せている彼が、この夏話題の超大作『スーパーマン リターンズ』に出演している。演じるのは、スーパーマンの敵役レックス・ルーサー。意外とも思えるハリウッド超大作への出演だが、その秘密をケビン自らが忙しい来日の合間を縫って、シネマカフェに語ってくれた。
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映画にまつわるファッション小噺 vol.5 世界の流行はこの人が作る! パトリシア・フィールド
元ヴォーグの編集長アシスタントが書いたことで、出版業界、ファッション業界の裏側がたっぷり暴露されていると話題になった小説「プラダを着た悪魔」。以前、シネマカフェのブログでお勧めしたことがあったけれど、やっと待望の映画が完成。現アメリカンヴォーグの名物編集長、アナ・ウィンターがモデルとも言われる“悪魔のようなボス”にメリル・ストリープ。彼女に散々こき使われる新人アシスタントに、『ブロークバック・マウンテン』で評価を高めたアン・ハサウェイとキャストが魅力。そこに加えて、華やかな世界を舞台にしているだけに、話題なのが絢爛豪華なハイ・ファッション。タイトルになっているプラダはもちろん、シャネル、ドルチェ&ガッバーナ、フェンディ…などなど、ここではリストアップできないぐらい沢山の高級ブランドが湯水のごとく登場する。
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水も滴るいい女たち vol.2 人気俳優もメロメロに。強力な女優オーラを持つケイト
世界のヒーロー、スーパーマンが帰ってきた! というわけで、タイトルはそのまんま『スーパーマン リターンズ』。どんなに些細な事件、事故をも軽視せず、世界の果てまで飛んでいく、我らが英雄。しかも、とびきりかっこいい! 本当に、こんな英雄がいてくれたらいいのに。映画を観ていると本当に心からそう願いたくなってしまいます。と、同時に、妙にうらやましいのがロイス・レイン。ヒーローものにはつきものの、美しきヒロインです。
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映画にまつわるファッション小噺 vol.4 映画顔負け。話題のスタイリッシュな海外ドラマ
『LOST』(AXN)、『Lの世界』(FOXlife)など、近頃面白い海外ドラマが、日本でも比較的早く見られるようになったことは、以前、Blogでもご紹介したとおり、今は、映画に引けをとらないくらい、TVドラマもスケールや質が高くなっているけれど、強い影響力を持った流行発信を行っていることも話題。
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水も滴るいい女たち vol.1 予測不可能なハリウッドの小悪魔、スカーレット
先月の美男子特集に続き、今週は見目麗しい女子を特集いたします。まずは、7月のコラムでご登場いただいたジョナサン・リース・メイヤーズの相手役を『マッチポイント』で務めているスカーレット・ヨハンソンから。
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『ユナイテッド93』レビュー
誰もが忘れもしない2001年9月11日。世界貿易センタービルへの2機、ペンタゴンへの1機とともにハイジャックされ、ペンシルヴァニアに墜落した“第4の旅客機”ユナイテッド航空93便。この映画は、その乗客、乗員40名が迎えた“運命の時”を描いた壮絶な人間ドラマを描いています。他機がおこしたテロの事実を知った後に、人々が体験する恐怖と絶望、そしてそこから生まれた果てしない勇気を如実に伝える本作は、まさにあの事件の追体験。もちろん、好ましい体験ではないけれど、自分たちの飛行機を凶器にさせまいとする人々の強さを通し、人間の神聖さを知る素晴らしい機会となるはず。監督は、二度と目にしたくないような事件についてでも、“真実を描くことの意義”を信じるポール・グリーングラス。映画化はまだ早いとの声もある中で、「難しくても正しいこと—この映画に関わることはまさにそれでした。事件が起きたことは否定できないのですから、むしろ多くの人に真実を語り、その中で彼らに生きていて欲しかったのです」と本作の存在意義をとなえています。綿密な調査と真摯な祈りの末に実現したこの人間賛歌。きっと犠牲者への最高の鎮魂歌ともなっているに違いありません。
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注目の美しい男たち vol.4 今や、誰もが知る存在に。苦悩する英雄、ジネディーヌ・ジダン
今、何かと話題になっているジネディーヌ・ジダン、愛称「ジズー」さま。1998年のFIFAワールドカップ・フランス大会での活躍で注目を集めていた彼ですが、今回の“頭突き事件”をきっかけに異様に有名になりました。海外のサッカー事情など何一つ知る由もないウチの母ですら、「ジダンがどうした」「ジダンがああした」などと日常会話の中で彼の名前を口にするほど。あれだけ、ワイドショーやニュース番組が騒いでいれば当然のこと。さほどの悲劇も喜劇も発生せず、いまいちピリッとしなかった今回のワールドカップでしたから、最後の最後でジダンが起こした“大事件”は、格好のネタといえるのでしょう。
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『ゲド戦記』レビュー
宮崎吾朗氏、第一回監督作品。アニメーション界の巨匠、宮崎駿の息子とあって、これが初メガフォンとは本当に驚き。もちろん、父を支えてきたベテランスタッフたちの協力あってのことだとは思うけれど、その完成度は立派なもの。ただ、きれいに完成していること=傑作ではありません、少なくとも映画の世界では。稚拙な演出に情熱がほとばしっていたり、ひとりよがりなまでの独創性が作家の個性を際立たせていたり。そういう意味では、壮大なる夢や切実な願いを作品に必死で練りこむ父・駿氏の作品の方が生き生きしていて若々しい。残念ながら、この作品には破天荒な独創性や、圧倒的な想像力は感じられないのだから。もちろん、父と比べられることを承知で、大役に挑んだ吾朗氏の勇気には感服。もしかして、立派な父親を疎ましく感じ殺害してしまう主人公の少年アレンと、父に反対されながらも監督となった吾朗氏の持つ葛藤&ジレンマは、ちょっと似た部分があるのかも。ところで、驚いたことがもうひとつ。ゲドって主役じゃないんです。タイトルから、てっきりそうかと思ったのに…。それゆえに、この映画がゲドってどんな人という興味をそそってくれたのは確か。原作が読みたくなりました。
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『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』レビュー
「もっと観た〜い」。2時間30分にわたって、たっぷり楽しんだはずなのに、映画が終って現実に戻った途端、ついそう思ってしまった私。シリーズ3作目へと誘導する、魅力たっぷりなエンディングのせいもあるけれど、ディズニーのアトラクションさながらに、決して飽きさせない怒涛のエンタテインメントに、すっかり引き込まれてしまったせいも。特に、ジョニー・デップ演じるジャック・スパロウ船長の魅力には更に磨きがかかっていて、見所も満載。小汚なくて、けっこうセコい人物だけど、どこか憎めない愛すべき存在。第2作目は、そんな彼を中心に回っていて、男っぷりの良さも、オーランド・ブルーム演じる美青年ウィルに全く引けをとっていない。挙句の果てに、キーラ・ナイトレイ演じるエリザベス・スワン嬢をめぐって三角関係めいたことなどもあったりして。さらには、妙なクリーチャーにも追いかけられる始末…。これ以上は、もったいなくて話せないので、ぜひ劇場で。それにしても、続きは来年まで待たなきゃいけないなんて、あまりにも残酷です(泣)
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映画にまつわるファッション小噺 vol.3 闘う美男美女
「意外ですね」。『X-MEN』シリーズが「大好き!」と言うと、結構そういう反応が帰ってくる。アクション系の大作について記事を書くことが少ないからかも。地味目の秀作好きなのは確か。