60年代フランスを代表するファッションアイコンであり、女性解放の象徴として知られるブリジット・バルドーの特集上映、「ブリジット・バルドー レトロスペクティヴ BB生誕90年祭」が9月13日(金)より全国の劇場にて開催される。
愛称はBB(ベベ)。60年代を代表するファッションアイコンであり、タブーを打ち破るポジティブな官能性で、フランス女優として初の世界的大スターとなったブリジット・バルドー。
1934年9月28日生まれ。父親は実業家、母は保険会社の重役の娘という、ブルジョワの家庭に長女として誕生。エッフェル塔に近い高級住宅街、パリ16区で育つ。幼少期よりバレエに夢中になりコンセルヴァトワールに入学。
14歳のときに雑誌「エル」の表紙を飾ったことをきっかけにモデルとして活動し、やがてマルク・アングレ監督の目に留まり、運命の輪が回り始める。最初の夫であるロジェ・ヴァディムが監督した『素直な悪女』(1956)はフランスよりもアメリカで空前絶後の大ヒットを記録し、一躍スターに。
一方、プライベートでは次々と恋人を作り、結婚と離婚を繰り返し、ときに自殺未遂も…。マスコミや社会が騒ぎ立てバックラッシュに遭っても、思うがままの生き方を貫いたBB。
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60年代に入ると、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー、ルイ・マル、ジャン=リュック・ゴダールなど錚々たる監督たちとの仕事で、女優としての存在感を高めていく。既存の価値観を否定した革新的なヌーヴェルヴァーグの作品に最も相応しい女優の1人として、バルドーは存在した。しかし、その波乱万丈のキャリアは39歳のとき自らの宣言によって終わりを迎えることとなる。
BBは堂々と旧習を乗り越える、掟破りの存在。スクリーンの中でもプライベートでも、欲望に素直に従い、それを悪びれない。社会による性的抑圧を軽やかに跳ねのける、自由奔放な女性像を体現していた。
だからこそ彼女の崇拝者の中には、フェミニズムの草分けとされる「第二の性」を著した作家・哲学者のシモーヌ・ド・ボーヴォワールや、18歳のときに「悲しみよ こんにちは」でセンセーショナルなデビューを果たした作家フランソワーズ・サガンらがいた。
特にボーヴォワールは1959年に発表したエッセイ「ブリジット・バルドーとロリータ症候群」の中で、BBのことを「女性史を推し進める機関車」と呼び、戦後フランスで最初の、そして最も解放された女性として紹介した。
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今回の特集上映はバルドーが今年9月に90歳を迎えることを記念して、ブリジット・バルドーの最高傑作と名高いルイ・マル監督、マルチェロ・マストロヤンニ共演の『私生活』(1962)をはじめとする50年代から70年代初頭までの主演作10本と、日本初公開となるドキュメンタリー映画のラインアップでバルドーの足跡をたどる。
なお、「カリコレ®2024」にて『裸で御免なさい』と初公開ドキュメンタリーの先行上映も決定している。
1.『裸で御免なさい』(1956)
デビュー作出版のためパリに出てきた小説家志望のヒロインが、手違いで高価なバルザックの初版本を売りとばしてしまったため、やむなくストリップ大会に出場し、一攫千金を狙うコメディ。
当時、20代前半のブリジット・バルドーが眩しいほどにチャーミングな初期代表作の1本。監督はミシェル・ボワロンと並び、初期バルドーとのコンビ作が多いマルク・アレグレ。バルドーの当時の夫ロジェ・ヴァディムが脚本で参加。
2.『ブリジット・バルドー 誤解』(2013)【日本初公開】
ブリジット・バルドーの熱狂的崇拝者であるデヴィッド・テブール監督が、主演作から多数のフッテージを用いて、バルドーの生涯をその子ども時代から家族との貴重なプライベート・ショット、そして女優としてのキャリアのハイライトまで、ビデオレターのような手法で考察していく集大成ドキュメンタリー。
朗読を担当するのは『セリーヌとジュリーは舟でゆく』(73)の名女優ビュル・オジエ。バルドーの同時代人として、ジャン・コクトー、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー、サミー・フレイ、ジャン=ルイ・トランティニャン、セルジュ・ゲンズブール、ロジェ・ヴァディム、ジャン=リュック・ゴダールなどフランスの映画・音楽界の重鎮たちのほか、文化的アイコンも多数登場する。
「ブリジット・バルドー レトロスペクティヴ BB生誕90年祭」は9月13日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて順次公開。