長編デビュー作で、いきなりアカデミー賞候補に!「幸運であり光栄」
ヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」で知られ、現在は犯罪多発エリアとなったパリ郊外のモンフェルメイユを舞台に、犯罪防止班に配属された刑事の視点から、現代社会に潜む闇を描いた。ある少年が引き起こした事件によって、同地で対立する複数の犯罪グループが、かつてない緊張状態に陥る…。ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』がパルム・ドールに輝いた第72回カンヌ国際映画祭(2019年)で審査員賞を受賞している。
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先日のオスカー授賞式にも出席したラジ・リ監督は「自分にとって初めての長編作品でノミネートされたのは幸運であり光栄なこと。たくさんの人たちの目に触れるチャンスを得られますから」と喜びのコメント。昨年、同じくアカデミー賞の授賞式に参加している細田監督は「今年は作品賞も、国際長編映画賞も良い作品がいっぱいで充実していた。そのうちの1本が間違いなく『レ・ミゼラブル』だった」と太鼓判を押していた。
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細田守監督「僕らがどうするべきか突きつけてくる」
モンフェルメイユで生まれ育ったラジ・リ監督は、本作を作る上で「ここに暮らす子どもたちの未来はどうなるんだろうという思いが強かった」そうで、「実際、健全に機能していない社会で、最初に犠牲になるのは子どもだから、社会や教育がいかにあるべきか考えている。それに僕自身が10歳の頃、警察から職務質問を受けた記憶も根強く残っている」とも。映画には、現地に暮らす演技経験ゼロの子どもたちを起用し「すばらしい演技を見せてくれて、誇りに思っている」と胸を張った。
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細田監督は「子どもたちの存在がカギを握る点は、僕の作品と共通している」と分析し、「社会派の作品で、ここまで子どもたちのリアリティを描いた作品はあまりないはず。それがとても感動したところ。僕らがどうするべきか突きつけてくる」。また、ハードな中にコミカルな要素を含む作風について「(北野武監督の)『その男、凶暴につき』を思い出したり、いろいろな切り口で楽しめる。観終われば、タイトルも腑に落ちる」と語ると、ラジ・リ監督も大いにうなずいていた。
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『レ・ミゼラブル』は2月28日(金)より新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開。