全編を通して、アクションがすごいの! 考え抜かれた迫力満点のカメラワークで、観客席にいるはずの私も、戦場で兵士たちと一緒に戦っているように感じました。まさに“体験型の映画”ね。本当にその場にいる感じで、驚きの没入体験でした。
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クリストファー・ノーランは、映画の撮影中も、徹底的に内容を秘密にしてきました。脚本は絶対に外部にもれないように注意していたそうです。クルーは600人以上いたのに、脚本を読むことを許されていたのは、たった20人だったんですって! でもそれだけじゃないんです。ノーランが撮影現場にモニターを置かないので、ほとんどの人がどんな映像が撮影されているか分からなかったの。もちろん写真撮影も禁止でした。『ダンケルク』のキャストたちは脚本をもらっていましたが、毎回修正が入ったそう。そして関係者以外に渡らないために、古い脚本は必ず返さないといけなかったの。
そんなわけで、この映画は厳重な管理の下で撮影されましたが、本作がノーランの代表作になりそうなことは秘密事項ではありません。すでにたくさんの批評家たちが、『ダンケルク』はノーランの大傑作であり、2018年のアカデミー賞有力候補だと話しています。
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『ダンケルク』は、1940年、第二次大戦中に起きた“ダンケルク大撤退”を描いた映画です。ノーランは脚本を執筆する前から、地上、海、空の3つの視点から物語を描こうと決めていました。そして台詞もできるかぎり排除するかわりに、映像のディテールに重点を置くことにしたそうです。
もちろん俳優の演技も素晴らしかったです。ボルトン海軍中佐役は、ベテラン俳優ケネス・ブラナーをはじめ、2人の新人俳優もよかったわ。主人公トミー役のフィオン・ホワイトヘッドと、ハリー・スタイルズ! もしかしてハリー・スタイルズは、オーディションで特別待遇を受けたと思っている人はいない? 違うのよ! だってノーランは、オーディションのとき、ハリー・スタイルズを知らなかったんですもの! 映画を見れば、ノーランが認めたのも納得よ。ハリー・スタイルズは素晴らしい演技を見せてくれました。
この映画は、時々目をそむけたくなるシーンもあるけど、素晴らしい映像の連続です。映画の中のキャストたちと、一緒にいるような感覚を得られるはずよ。
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