日本ではバットマンやスーパーマンに比べて、馴染みが薄いワンダーウーマンだが、その歴史は長く、DCコミックスに初登場したのが1941年。それから単独主演として、スクリーンで躍動するまで75年以上の歳月が流れたわけで、ファンにとってはまさに「満を持して」の映画化だ。
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逆に言えば、『ワンダーウーマン』が成功に至る歳月の長さは、これまで、ヒロインを主役に据えた超大作を製作するのが、いかに難しい状況だったかを証明することにもなった。たとえ、女性が主役のアクション映画が製作されても、「一見、強くて美しいが、実は男の幻想を全身でまとった」キャラクターが横行するのが現実だった。
そんな中、『ワンダーウーマン』の成功に特別な意義があるのは、女性から圧倒的な支持を得たことにほかならない。その理由は、彼女が旧態依然とした価値観を打ち破り、「女性であることはすばらしいが、決して特別ではない」という真に力強いメッセージを突きつけたからだ。
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もちろん、『トゥームレイダー』『バイオハザード』『ハンガー・ゲーム』といった00年代以降の“アクションヒロイン映画”のムーブメント、さらに女性が主役を務める『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の大ヒットという重要な下地があったことも見逃せない。
それだけにメガホンをとったパティ・ジェンキンスに対し、「女性監督だから、女性が共感できる作品になった」と評価する姿勢は、いかにも“男目線”で違和感を覚える(実際には、本作におけるジェンキンス監督はただただ、優れた仕事をしている)。
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例えば、男性の監督に向かって「やっぱり男性だから、男性の気持ちがしっかり描けていますね」なんて言わないし、そもそも女性監督という言葉が存在する時点で、まだまだ『ワンダーウーマン』が目指す理想の世界には程遠い。ハリウッドにおける女性と男性のギャラ格差など、現実的な問題も山積するだけに、本作が成し遂げた偉業はゴールではなく“はじまり”に過ぎないのだ。