荒木飛呂彦の大人気漫画を実写化した『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』で初めて共演を果たした山崎さんと伊勢谷さん。これまで、山崎さんについてほとんど何も知らず「事前に何のイメージもないまま」現場に臨んだという伊勢谷さんは、まず、山崎さんの立ち居振る舞いへの好感を口にする。
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「正直、自分を大きく見せたがるような22才だったらめんどくさいですけど、そういうところがなく、自分をかっこつけて見せようとするでもなく、素直なあけっぴろげな好感の持てる男でした」。
さらに、芝居に関しても、独特の世界観を持ち、個性的なキャラクターたちが交錯する原作を踏まえ、それを生身の人間が演じる難しさに触れつつこう続ける。
「なかなか自然な感じでできる役じゃないので、どんなふうに落とし込んでくるのか? それは共演者としてこの先、付き合っていく上で一番最初が大事で、そこはセンスだと思うんです。それが、ちゃんとみんなにわかるところで自分の役を作り上げていく整理ができていて、センスあるんだなと感じたし、芝居がやりやすかったです。自分のリズムでもって芝居をしているので、こちらも変に気を使う必要もなくできましたね」。
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では、山崎さんは東方仗助という髪型、衣装も含めて超個性派の主人公をどのように生身の人間として“落とし込んだ”のだろうか?
「漫画だけでなくアニメも大成功している作品だったので、アニメも見ました。アニメや漫画と同じような言い回しのセリフも多かったので、これはただ普通に(自然な芝居で)言うだけじゃダメだと思い、リスペクトを込めて意識しました。仗助が最初にキレるシーンも、表情や眉毛の角度を家で鏡を見ながらひとりで練習しました。でも、大事なのは仗助の信念――命を救ってくれた人と同じ服装、髪型をしているという部分を大切に演じました」。
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そう、この昔ながらの“ツッパリ”のようなゴリゴリのリーゼントにダボッとした学ランが仗助のトレードマーク。こんな格好の山崎賢人を見る機会もまずほかではない。しかも、髪型をけなされると、誰であろうがぶちキレるという厄介なクセの持ち主。見境なくぶちキレるという役どころも、ほかの作品ではまず見られない姿だが…。
「なぜキレるのか? そこに意味があるんですよね。キレるシーンは、自分でも制御が利かない、なぜここまでキレちゃってるのか、自分でもわかんないくらい腹が立つという感じで思い切りやってました。まあ、一応、演じているときは表情とかを考えつつ、僕自身はコントロールはしているんですけど(笑)」。
物語の設定は杜王町という日本の街であり、もともと、原作者の荒木さんの地元である仙台をモデルにしていると言われているが、原作に一貫して流れる独特の世界観を再現すべく、今回の映画の撮影は、スペインのバルセロナ近郊の街・シッチェスで行われた。伊勢谷さんは「あの画になるのはあそこじゃないと無理だった。『ジョジョ』を成立させるためにここを選んだのはすごい決断力だねって話を撮影中もみんなでしていました」とふり返る。
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ただ、この南欧の美しい街を背景に、仗助をはじめ、先述のようなゴリゴリのヤンキーファッションの男たちが戦いを繰り広げるというのも、独特過ぎる光景であり、これもまた『ジョジョ』ならでは…である。およそ18歳離れた伊勢谷さんと山崎さんだが、こうしたヤンキー、ツッパリ文化への理解、共感、そして認識のギャップはいかに? 山崎さんは言う。
「僕自身は、そういう(不良気質は)のはなかったですね。周りにも、そこまで本当につっぱってるってタイプの不良はあまりいなかったです。ファッションみたいな感じですよね。仗助も、実際はヤンキーとか不良、ツッパリってわけではないですし、あくまでも憧れの命の恩人に寄せているということですからね」。
伊勢谷さんは「(山崎さんの世代のヤンキーは)経済用語化した“マイルドヤンキー”だね」と笑いつつ、自身の時代のヤンキー文化についてこう明かす。
「僕らの頃は、ちょうど(不良が)“チーマー”になりつつあった時期ですね。いまはもはやそれすらいないですよね(笑)。僕自身は、(不良意識は)ゴリゴリにありましたよ。髪型は3ミリ躯体の坊主で金髪にしてて、それは甲本ヒロトさんの影響から…もっと言うと漫画の『ろくでなしBLUES』に出てくる、(甲本さんをモデルにした)ヒロトを意識してたんです。あの頃は目が合うだけで、殴り合うみたいな感じの人がたくさんいましたね(笑)」。
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