「ベルには反骨精神みたいなものがあるでしょう? ガストンに守られ、幸せにしてもらうのを待つだけの女の子じゃない。彼女が歌う曲の中に、こんな歌詞があるわ。『私が望むと思われている以上のことを、私は望む』。それがベルのありのままの気持ちだし、そんな彼女の少し反抗的ですらある冒険心が私は大好き。村の人々が揃って同じ考え方をする中、自分なりの感じ方や視点を貫くところもね」。

「ベルは相手の心の奥深くを見つめたいと思っている。だからこそ、野獣に対しても偏見のない心で接するようになるの」とも語るエマの言葉通り、村の中で孤立したベルと醜い姿で孤独な日々を送る野獣が恋に落ちるのはごく自然な流れだった。そのうえ、エマと野獣役のダン・スティーヴンス、そして監督のビル・コンドンは、「なぜ2人は惹かれ合うのか、ベルと野獣がつながりを実感し合う過程をより深く描こうと話し合ったの」と明かす。
「そこで、私たちは2人の共通点を明確にした。その1つが、彼らがそれぞれ早くに母親を亡くしたという事実。もう1つが、書物を愛する気持ちね。それら2つが、ベルと野獣の間に橋をかけるの。そう考えると、野獣がベルに城の図書室を自由に使っていいと言うシーンは本当に素敵。そもそも、あんなに立派な図書室が自分のものになったら私だって感激しちゃうもの。オリジナルのアニメを観たときも野獣の図書室を見て、いつか私にも『この図書室すべてが君のものだよ!』と言ってくれる人が現れないかしらって空想していたの。でも、本を読み漁ってばかりいたら、『美女と野獣』が違う物語になるわよね(笑)」。
エマの読書家ぶりは誰もが知るところで、昨年は世界中の女性に向けたブッククラブを発足。その活動の一環として、ロンドンとニューヨークの地下鉄にマヤ・アンジェロウの自伝を隠したことも話題になった。「誰も乗っていないことがあるから、そんなときに置いていくの。メッセージを添えてね。どこに隠したのかは内緒よ。だって、捜す楽しみがなくなってしまうでしょ(笑)」だそうだ。

ブッククラブや国連機関UN Womenの親善大使としての活動に触れるまでもなく、いまや若い女性たちのロールモデルとなったエマ・ワトソン。そんな彼女だけに、「自立した女性でありたいという私自身の意識を、ベル役に持ち込まない方が難しいわ」とも語る。
「ベルの中にある現代的な要素を引き出すことが、私にとっても大事だったの。だからと言って、ベルの性格を変えたわけじゃない。すでに彼女の中にあるものを、より強調したという言い方が正しいわね。それと同時に、実写ならではのリアリティを人物像に加えた部分もあるわ。バレエシューズを履いて走り回るのは、アニメのヒロインにはできても現実には無理だもの。だから、私が演じたベルは頑丈なブーツを履いている。ほかの衣装も驚くほど美しく、それでいて実用的なデザインになっているわ。要するに、私は私のできることをし、できる限り力強く、けれどもあまり自分が出すぎないように、自分の物の見方を表現したということになるわね」。
劇中のベルがスカートの下にハーフパンツを履いているのは、馬の乗り降りさえも難なくできるように。そして、スカートにたくさんのポケットが付いているのは、工具や2~3冊の本を持ち歩くベルの両手がいつも自由に動かせるように。もちろん、その一方でエマはディズニープリンセスらしいドレスの数々も楽しんだが、ベルの代名詞とも言えるイエローのドレスを着たときのことは「実はほとんど覚えていないの…」と苦笑する。
「あのドレスを着たベルが、野獣とダンスを踊るシーンは本当に有名でしょう? だから、すごく不安だったの。ダンと私はとてもシリアスなダンスコンテストに出場する気分だったわね。しかも、ダンは巨体の野獣を演じる間ずっと、竹馬のようなものを履いていた。つまり、私は馬の足をしたお相手とダンスをしたわけで、足を踏みつけて傷つけ合いませんように、惨事が起きませんようにと願ったわ。そのおかげで、ドレスどころじゃなくなってしまったの(笑)」。
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