こうした変化に伴い多くの企業が、自社のブランディングの方法として、これまでの15秒、30秒の短いCMとは異なるショートフィルムの製作に力を入れるようになった。「Lexus Short Films」はそんな試みの先駆的存在。「LEXUS(レクサス)」と米独立系スタジオの大手「ワインスタインカンパニー」が協同で有望な若手監督のショートフィルム製作を支援しており、レクサスが掲げる“Life is Amazing”をテーマに今年も「Market Hours」(ジョン・ゴールドマン監督)、「Operation Barn Owl」(大川五月監督/落合賢脚本)の2作品が制作された。
今年はSSFF & ASIAにおいてワールドプレミア上映も行われたが、この十数年のショートフィルムの興隆を見守ってきた、いや、自ら先頭に立ってその発展に寄与してきた別所さんに「Lexus Short Films 2014」の魅力からショートフィルムの変化、そして今後についてじっくりと話を聞いた。
「映画も産業やテクノロジーと表裏一体。21世紀に入って映画もその在り方を自問自答してきたし、企業も広告とはどうあるべきかを自答し続けてきた」と語るが、その中で「Lexus Short Films」のような企画が生まれることは「必然だった」とも。
「自動車であれ、他の産業であれ“ものづくり”というのはそこにデザインやアート、普遍性というのを必ず追い求めていくものです。映画もまた時代を“真空パック”する存在ですが、その意味で、洗練されたラグジュアリーブランドである『レクサス』が新たな才能やクリエイターを引っ張り上げ、新しい表現を模索し、新たな時代の“映像未来予想図”を示していくというのは必然でしょう。まず一義的に、レクサスは若いクリエイターを支援するけど、そこで生まれるデザインや創造性の力が、最終的にレクサスが追い求めるライフスタイル――Life is Amazing―――を実現する原動力となる。単なる芸術振興を超えた新たなパラダイムを提示していると思います」。
とここまで“映画祭代表”として、ビジネスマンとして、ショートフィルムについて語ってもらったが「Lexus Short Films 2014」で発表された「Market Hours」と「Operation Barn Owl」の2作に話が及ぶと、急に別所さんは俳優、いや、ひとりの映画ファンの顔になり、愛情あふれる言葉が口をつく。
「どちらもほのかなラブストーリーで、片想いを描いてますが、『Market Hours』が心の中の声を表象化していくのに対し、『Operation Barn Owl』は日本、アジア的な間を大事にして心の声を表情や佇まいで見せてくれます。両作品とも、良い作品が持つセリフや映像、構成上のダブルミーニング、トリプルミーニングを巧みに使っていて、本当にクオリティの高い作品に仕上がっていると思います。何度も観ることで細部にわたるミルフィーユのような重層的な構想や意味づけがジュワっと味わい深く出てくるので、じっくりと堪能していただきたいです」。
《シネマカフェ編集部》