1本目は、「フランス映画祭2013」のオープニング上映作『In the House』(原題)のフランソワ・オゾン監督の2009年の作品『ムースの隠遁』。ドラッグ中毒でパートナーであったルイの死後、妊娠が判明したヒロイン・ムースがパリを離れて隠遁生活を送る日々が描かれる本作。母性ではなく、亡き恋人への想いだけでお腹に子どもを宿し続けている彼女と、突然訪ねてくるルイの弟でゲイのポールが心を通わせていく。ムースを演じるイザベル・カレは撮影時、実際に妊娠6か月だったそう。この世にはいないルイを介して育まれるムースとポールの関係、新しい命を迎え入れるということについて、自身もゲイと公表しているオゾン監督の思いが込められた1作だ。