『CURE』や『アカルイミライ』の黒沢清監督が初めて家族をテーマにした『トウキョウソナタ』。東京に暮らすごく普通の一家の崩壊と再生を描いた本作が9月27日(土)に初日を迎え、黒沢監督をはじめ主演の香川照之、小泉今日子、小柳友、井之脇海、津田寛治が舞台挨拶に登壇した。佐々木一家の主である竜平を演じた香川さんは「ついに初日を迎えまして、暦を見たら本日は大安でした(笑)。黒沢監督の新作が出るたびに『またご一緒出来なかったな…』という思いだったのですが、今回主役を演じさせていただき、自信を持って『自分にとって最も大切な作品』と言えることが幸せです。この作品が末永く語り継がれていくことを願っています」と嬉しそうに語った。香川さんと同じく、黒沢作品への出演を心から喜んでいたのが、竜平の高校時代の同級生・黒須を演じた津田さん。「苦節10年…黒沢監督の作品に出たくて仕方なかったんです。いろんな人から『黒沢さんの作品には(出演希望の)役者の行列が出来てる』なんて言われていたんですが、感無量です! 今日も、本当は佐々木一家だけの舞台挨拶の方が美しいのは分かってはいるんですが、来てしまいました」と興奮気味に語った。佐々木家の長男・貴を演じた小柳さんは「この映画を通じて自分の中で成長を感じることが出来ました。また黒沢監督やキャストのみなさんとご一緒出来たらいいなと思います」と挨拶。次男・健二に扮した井之脇さんは「撮影時と比べて12〜3センチ身長が伸びて声も変わってしまったので、映画の中の僕とここにいる僕は別人です。そんなところも見ていただけたらと思います」と語り、客席からは笑いがわき起こった。一家の母・恵を演じた小泉さんは母親役を演じたことについて「すんなりと母の気持ちに入っていけました。子供たちが劇中で成長していくのと、香川さんに引っ張られながら役者として成長していくのをどちらも母親の気持ちで見守っていました」とふり返った。この日の舞台挨拶は恵比寿の劇場で行われたが、黒沢監督は「この作品は東京と言っても都心のど真ん中ではなく郊外の物語。そういう意味で、新宿や渋谷、銀座の劇場ではなく恵比寿というのがこの映画にふさわしいと思います」と感慨深げに語った。さらに監督は作品について「俳優だけでなく、映像も音も最高レベルのものだと自負しています」と自信をのぞかせた。舞台挨拶の最後には劇中に登場するドーナツに因んで香川さんと小泉さんの夫婦によるケーキカットならぬ“ドーナツカット”が行われた。さらに小泉さんが家族3人にドーナツを食べさせてあげると、香川さんは一言「まいうー!」。ドーナツをほおばり嬉しそうに肩を組む香川さん、小柳さん、井之脇さんを尻目に仲間はずれの津田さんはうらやましそう。これには会場から大きな笑いがわき起こった。『トウキョウソナタ』は恵比寿ガーデンシネマ、シネカノン有楽町ほか全国にて公開中。