リメイク、原作もの、舞台の映画化…。世界で作られる映画の多くが、オリジナル作品ではないというネタ切れ気味の映画界。どこかで聞いたような話ばかりが溢れる中、クリエイティヴな世界ではことさら、オリジナリティのあるものがありがたがられるのも当然のこと。 別メディアで語られている物語を映画向けに脚色するのは大変な作業なのだけれど、アカデミー賞でも、脚色賞、脚本賞と分かれている以上、それぞれ扱いが違うのは明らか。もちろん、どちらが上ということではないですが。とはいえ、オリジナリティが高いという評価を獲ることは、クリエイターたちにとって最上の喜びであるはず。そこで、オスカー間近のこの時期に注目したのは、個性豊かなクリエイターたちが生み出したこの2本。『ビフォア・サンセット』と『エターナル・サンシャイン』です。『ビフォア〜』は、1995年に製作された『恋人までの距離』の続編。同じスタッフ、同じキャストなのだけど、単独の作品としても十分楽しめる会話劇。かつて恋心を抱きながらも離れ離れになった男女が9年ぶりに再会し、長年の空白を埋めていく姿が、“85分”で描かれます。この“85分”とは、映画の中で実際に登場人物たちに与えられた時間と同じ。つまり、物語は現実の時間進行と同時というわけ。この手法は、TVドラマ[「24 TWENTY FOUR」でお馴染みだけれど、こちらは重大な事件が起こるわけではなく、男女のおしゃべりのみで進みます。二人の心が近づいたり離れたりする様子に、なんだかドキドキしたりして。映画の世界に引き込まれるという意味では、かなりの臨場感が味わえます。一方、『エターナル〜』は、記憶にまつわる物語。別れてしまった恋人が自分との記憶を勝手に消してしまうという奇想天外さ。『マルコヴィッチの穴』を手がけたチャーリー・カウフマンが脚本を担当しているだけに、想像を絶するストーリー展開が快い。「驚きの…」「衝撃の…」などともったいぶった宣伝文句がこれでもかと飛び交うけれど、意外性というものを本当に備えている作品は案外少ないのですからね。さて、『マルコヴィッチの穴』(最優秀脚本賞ノミネート)『アダプテーション』(最優秀脚色賞ノミネート)に続き、この作品でもオスカー・ノミネートなりますでしょうか!ぜひどちらかはノミネート、願わくば受賞して…と念じている私です。