核爆弾が落ちてもゴキブリとともに生き残るといわれ、2,000 人もの女性と夜を共にし、1956 年にはロックンロール誕生の瞬間を目撃、マルボロとジャックダニエルにまみれて血液が猛毒化、ビートルズを愛し、世界最大音量のバンド《モーターヘッド》を 40 年間続け、1945 年クリスマスイブである 12 月 24 日に負け犬として生まれて以来、常に勝つために生き、不眠不休の大暴走を続けた人間とは思えない豪傑、ロックンロールの化身レミー・キルミスターがこの世を去ったのは 2015 年。70 歳の誕生日を迎えてから 4 日後、癌を宣告されてからわずか 2 日後のことだった。そして翌日、メンバーからモーターヘッドの活動終了が伝えられた。1975 年の結成以来、メインストリームとは真逆のロックの裏街道を驀進したモーターヘッドは、ヘヴィ・メタルとパンク/ハードコアという普段相容れない両ジャンルからも熱い支持を集め、その両者が一触即発の状態に陥った場合でもモーターヘッドの曲を流せばすべてがおさまるという、この世に類を見ない存在感を誇ったバンドだ。いつ、どこで、どんなライヴをこなしても何も変わらないモーターヘッドという地球の切り札の底力がスクリーンを通して伝わって来る恐るべき作品であり、いつもとまったく同じライヴ。鑑賞後数日間は耳が聞こえづらくなることを覚悟しなければならない。
マーティン・ホークス