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【MOVIEブログ】2015カンヌ映画祭 Day6

18日、月曜日。6時15分起床。前夜3時就寝だったのでどうなることかと思ったけど、時差ボケと気が張っているのとで、すんなり起きられてよかった。東京でもこう行けばいいのになあ。

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18日、月曜日。6時15分起床。前夜3時就寝だったのでどうなることかと思ったけど、時差ボケと気が張っているのとで、すんなり起きられてよかった。東京でもこう行けばいいのになあ。

8時半の上映を見る予定で、今日はチケットを持ってはいるけれど、いろいろ心配なので7時に会場に行ってみる。すると、1番乗りだった。こういうのは、ちょっと恥ずかしい…。

見たのは、『母の身終い』が日本でも劇場公開された、フランスのステファヌ・ブリゼ監督による『The Measure of a Man』(写真)という作品で、前作に続きヴァンサン・ランドンが主演。辛い失業期間を経て、スーパーの監視員の仕事に就く男を見つめる物語。ストーリー展開でぐいぐい引っ張っていく作品ではなく、男が置かれた状況を断続的に観察するようなシーンを重ねていき、やがてひとりの人間の人生の重要な局面が大きな物語として浮かび上がってくる構成。これが実に上手く、実に見せる。

失業の辛さ、ままならぬ職探し、就職訓練所での屈辱など、しんどい状況の合間に、妻とのダンスのレッスン、障害を抱えた息子との温かいひとときなどが挿入され、等身大の市井の人間の姿が見えてくる。現代社会において人間が人間らしく生きることの難しさを、(声高にではなく)静かに訴えるリアリズム演出は、本当に素晴らしいとしか言いようがない。そして、このブログで何度も繰り返し書いているけれど、ヴァンサン・ランドンという役者の素晴らしさを形容する言葉を僕は持たない…。有力な主演男優賞候補。

上映終わり、ミーティングへ。カンヌのマーケットでの商談のピークはそろそろ過ぎようとしていて、会場の人の数も少し減ってきた感じかな。資料をもらっていなかった企業ブースを改めてじっくり回り、飛び込みでミーティングを数件。マーケット会場を出て、市内のアパートなどの中にある企業ブースにも行き、あっち行ったりこっち行ったりで、15時までミーティング。

上映を見ているとミーティングをしなくてはと焦り、ミーティングをしていると上映を見たいという気持ちが募り、何をやっていても落ち着かないのは、いつものこと…。が、やっぱり人と会って話すというのは本当に大事ですね。いまさら何を言っているのだということだけれど、メールだけじゃダメです。はい。

好物のサラミサンドイッチを買ってかじり(美味しいバターが嬉しい)、15時半の上映へ。イギリスの会社のラインアップで気になっていた作品をマーケット試写で見て、なかなか収穫。

上手く時間に合う上映がなかったので、いったん宿に帰り、パソコン仕事を1時間ほど。着替えて、日本が主催する(と書くと大げさだけど)「カンパイ・ナイト」というパーティーへ。グランド・ホテルという、文字通り大きいホテルの中庭に巨大な会場が設営されていて(日本のパーティーだけのためではなく、常設の多目的会場)、千人規模の招待者が集まる大きなパーティーでありました。

河瀬直美監督やジャ・ジャンクー監督などの映画人も来場したパーティーに19時から2時間ほど滞在し、上映に移動。今年のコンペのチケットの取り方のシステムが変わったことは前にも書いたけれど、本当にチケットが取れない。事前にネットで申請し、上映の48時間前から12時間前くらいにかけて当選か落選かがメールで知らされるシステムで、抽選ではなく何らかのルールに基づいて決まるらしく、いやあ、見事に当たらない。ようやくチケットが当たった夜がジャパン・パーティーの夜と重なってしまい、複雑な心境だったのだけれど、2時間の間で多くの人と話せたので、上映に行くことに踏み切ることにする…。

メイン会場に入って見ると、とんでもなくいい席で、なんと1階中央の作品ゲストと同じ列。イザベル・ユペールが、手を伸ばしたら届きそうな席に座る。なんと。チケットになかなか当たらない人には、たまに当たったときはいい席にしてあげようという配慮が働いているのだろうか。まさかね。

見たのは、ノルウェーのジョアキン・トリアー監督による『Louder than Bombs』。主演がジェシー・アイゼンバーグ、ガブリエル・バーン、イザベル・ユペールなど。著名な戦場カメラマン(ユペール)が事故死し、残された夫(バーン)と息子たち(アイゼンバーグなど)の、その後の状況を描く物語。

コンペの他の作品と比べてしまうと、いささか行儀が良く、際立って突出しているわけではないので、おそらく賞には絡まないだろうと予想されるのだけれど、ジェシー・アイゼンバーグの抜群の演技や、強力な印象を残すユペールの存在感など、見応えは十分。そして、終盤にあまりにも映画的に素晴らしいシーンがあったので、それだけで僕はこの映画を忘れることはないと思う。

ところで、昨日公式上映されたコンペ作品で、フランスのマイウェン監督による『Mon Roi』(原題/日本語訳は「私の王さま」)を数日前に見ていたので、その感想を。結論から書くと、僕は絶賛なのだけれど、周りでは全くダメと言う人も多く、かなり賛否が分かれているみたいだ。

エマニュエル・ベルコ扮する妻と、ヴァンサン・カッセル扮する夫との、長年に渡る愛憎のドラマで、極端な二面性を持つ夫に振り回される妻の視点から物語は語られる。裕福な実業家でユーモアに富み、野性味のあるハンサムで、女性関係が派手に見えるが実は真剣に愛してくれて優しいという、まさに完璧な夫が、徐々に裏の顔を見せていって妻が壊れていくというのは、まあパターンではあるかもしれない。

けれども、ぶつかり合う会話の隅々から、それぞれが置かれた状況に対する真摯な感情が伝わってきて、映画に嘘がないと、僕は感じた次第。いままで本作を見た人たちと感想を交わした印象としては、総じて女性陣のウケが悪く、男性陣の評価が高い。むむー。

主演のヴァンサン・カッセルが、はまり役で実に素晴らしい。と言ったら、映画の趣味が合うはずの知人(女性)曰く、「いつもの彼のお決まりの演技じゃん」。そうなのかなあ。ともかく、ヴァンサン・ランドンとヴァンサン・カッセル。両ヴァンサンが、僕の中での現時点での主演男優賞候補であります。

ということで、本日も無事終了。カンヌもそろそろ後半戦。がんばっていきましょう。
《矢田部吉彦》

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