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【MOVIEブログ】2015カンヌ映画祭 Day3

15日、金曜日。朝は快晴。6時半に目覚ましのけたたましい音で目が覚める。逝ってしまったと思った目覚まし時計、電池を変えたら復活しました。昨日からどうでもいい話を書いてしまい、失礼しました…。

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15日、金曜日。朝は快晴。6時半に目覚ましのけたたましい音で目が覚める。逝ってしまったと思った目覚まし時計、電池を変えたら復活しました。昨日からどうでもいい話を書いてしまい、失礼しました…。

8時半のコンペの上映を見るべく、7時45分に宿を出て列に並んでみる。実は今年からメイン会場での上映のチケットの取り方が大幅に変わってしまい、昨年まで積み上げてきた、効率的に上映を見る戦略を練り直さなくてはならなくなってしまった。昨年までは朝イチの上映はチケット無しでも(登録パス提示で)見られたのだけど、今年はどうだろうか。

不安に駆られて並ぶこと1時間、並んだ列はピクリとも動かず、非公式に実施されている同作品の9時からの追加上映にも入れず、泣く泣く断念。今年最も楽しみにしている1本のギリシャ映画『The Lobster』だったので、ああ、無念の極み。明日の再上映に賭けるしかない…。

まあしょうがない。これがカンヌだ。いちいち落ち込んでもいられないので、気を取り直してマーケット上映の作品(映画祭の出品作ではない)を見ることにする。こう書くと滑り止めみたいな響きになってしまうけれど、大好きなジェローム・ボネル監督の新作なので、これはこれでとても嬉しい。

『All About Them(英題)』という作品で、感情の機微を丁寧に描くことに定評のあるボネル監督らしく、繊細で美しい作品。ひと組の男女のカップルのそれぞれと付き合うことになる女性を主人公とする内容で、つまり三人の男女がそれぞれに関係を持っている。こじれない三角関係というか、いわゆる三角関係の変形版で、なさそうで意外にありそうかもしれない設定が面白い。クローズアップを多用するスタイルが功を奏していて、カメラが各人物に近く、細かい感情の動きが見る者にも十分に伝わってくる。ある意味フランス映画らしいのかもしれないけれど、やはりボネル監督は上手い。とても満足。

12時から、大手の映画会社とミーティング。30分ほど話してから外に出ると、にわかに風が強くなっている。晴れているけれど、吹き飛ばされそうな強風だ。風をこらえて歩いていると、『The Lobster』を見た人に会ったので感想を聞いてみる。とても面白かった!とのことで、んー、悔しさ倍増。

13時から、東京国際映画祭が主催する海外のマスコミの方々との懇親会に出席すべく、会場となるジャパン・パビリオンへ。1時間半ほど各国の記者の人たちと会談。初対面の方が多く、こういう機会はなかなか多くはないので、とても有意義な時間だった!

16時からのコンペの上映はチケットが取れていたので、それでも1時間前には列に並んで、無事に入場。初監督作品で見事にコンペ入りした、ハンガリーのラズロ・ネメス監督による『Sun of Saul』(写真)。初監督作がコンペとは、一体どんな作品であろうと期待が高まっていた中、はたしてその期待を見事に凌駕する傑作であった。

ナチスによるホロコーストが進行している中、強制収容所において他の収容者を管理する身分を与えられた収容者たちが存在し、彼らは処刑が先送りにされる代わりに、ガス室に送られていく人々の後処理をさせられている。幾重にも重なった裸の死体の山の脇で、必死に床の汚物を洗い流す。地獄絵図を繰り返し見させられる主人公は表情を失い、狂気に陥っていく。

スタンダードサイズの画面、主人公のクローズアップを中心にした手持ちカメラ、長廻しと切り替えの使い分け、フレームの奥と外とで阿鼻叫喚の事態が進行する。ゲルマンの『神々のたそがれ』を連想してもらってもいいかもしれない。とてつもない強度と衝撃を備えた作品だ。フィルム撮影、フィルム上映。

間違いなく、今年のカンヌを震撼させる1本。まさにこれがコンペでなくて何がコンペだと思わされる。昨年『ザ・トライブ』がコンペでなかった反動か、というのはうがった見方だけれど、新人監督にこれだけの規模の作品が作れるハンガリーのいまの環境はいったいどういうことになっているのか、色々な意味で衝撃的で興味が尽きない。タル・ベーラが引退したいま、ハンガリーから新たなる巨星の誕生と言っても過言ではない。賞に絡むのは間違いない。

本作がホロコーストを扱っていることを、今日まで僕は知らなかった(事前情報を入れないようにしていた)のだけれど、午前中の上映で並んでいたときに、ドイツのミュンヘン映画祭のプログラマーに声をかけられ、カンヌで楽しみにしている作品の話をしていると、彼は本作を挙げた。曰く、「ホロコーストを行ったのは我々なのだから、こういう作品をきちんと見ないといけないのだ」。僕は返す言葉を失った。

18時から、同じくコンペの作品の上映へ。ただ、映画会社による招待者限定のプライベートな事前試写で、公式上映は後日なので、感想をいま書くのは控えた方がいいかな。公式上映が終わってから書きます。

20時に終わり、中華のテイクアウトを買って宿に戻り、食べながらメールをチェックして、21時過ぎに外に出て、22時からの上映へ。

「ある視点」部門の韓国映画で、オ・スンウク監督による『The Shameless』。オ・スンウク監督は『8月のクリスマス』の脚本で、監督作は2000年の『キリマンジャロ』に次ぐ2本目、ですね。主演はキム・ナムギル。凄腕の若い刑事と、ヤクザ者とその情婦の3人の関係を巡るハードボイルド・ドラマ。雰囲気はとてもあるのだけれど、展開がいささか単調に思えてしまい、いまひとつ入り込めず、残念。いや、少し疲れてしまったこちらに問題があるのかも。『Sun of Saul』の衝撃が尾を引いていた、と言ってもいいかもしれない…。

宿に戻って0時過ぎ。クールダウンにビールをちびりと飲んで(失礼)これを書き、今宵もそろそろ2時。ダウンです!
《矢田部吉彦》

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